人間の価値。

「私はあの日本を代表する、いや世界を代表する大企業で部長として活躍したのだぞ。社会貢献度であの人よりも下というのは納得がいかないのだが…」


 あの世では創造主に対するクレームが絶えることはない。その多くが、“なぜ自分がこのステージにいるのか?”といういちゃもんだ。


 創造主も忙しいので、各々にそれぞれ答えるということはない。ただし、ケーススタディになりえるような事例については、将来への模範解答として答えることにしている。


「一流企業の部長と、一人の子どもを立派に育て上げたシングルマザーでは、我々の感覚では比較としては同等だ。部長だったお前は、不倫をしていたではないか?その時点で同列だったステージも、お前の方が下になるのは道理ではないか」


 言うまでも無いことを、諭す。もちろん、件の部長が納得することはない。その疑念は永遠に続くのかもしれないし、それが一つの業なのかも知れぬ。


“自らが創ったとはいえ、あまりにも愚かな”…という、創造主の大きなため息が漏れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る