適材適所。

 この仕事に涙はつき物だ。高齢者と向き合う介護という仕事は、死とも密接に繋がっている。


 その日、利用者さんが一人亡くなり、重い空気が漂っていた。全ての人に笑顔で接する人柄だったこともあり、みんなから愛されていたから。みんなか死を悲しんでいた。


 中には、愛されていないタイプの利用者もいる。もっと言うと、嫌われている高齢者。そんな利用者であっても、死に対してはみんな、厳粛に臨む。


「そういえばあなた、あの嫌われもののおじいさんとも、しっかりやりとりをしてて偉いよね。まあ、私たちとは業務上の話しかしないけど笑」

 と、年に1回の飲み会の席で先輩から言われたこともある。


 ──閉じていく人間関係だとわかっているから、頑張れる。限定された時間だと解っているから、関係を紡いでいくことできる。そんな私のような人間も、世の中にはいるのだ。この仕事は私に向いている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る