新入隊員
火王のあとに続くようにしてアシュレイとアルフォンスは騎士団の訓練所に向かった。
訓練所に着くと騎士達が集まり、それと同時に僅かにどよめいた。
それもそのはず。騎士団に女が入るなど例がない。
火王も女であるが、火王は騎士団長である前に火ノ国の王である。王が自国の騎士団を束ねることに違和感を感じる者はいないだろう。なぜならこの世界ではそれが普通であるからだ。そして騎士である彼らが生まれた時からの当たり前であり、常識である。
火王が騎士が集まってできた列の前に立つと、流石と言うべきか騎士達はすぐ静かになる。
それを確認した火王はアシュレイの紹介を始めた。
「今日は新入隊員を紹介する。私の娘、アシュレイだ」
アシュレイが軽く会釈をする。
彼女の名前を、立場を聞いた瞬間、先程よりも大きなどよめきが起きた。
騎士達の動揺が見て取れる。
「アシュレイはアルフォンスと同じ特別部隊に配属される。騎士として動くとき、アシュレイが王女だからと言って気を使うことはするな。遠慮は命取りになる。わかったな」
反応が一瞬遅れたが、
その後、いつも通り火王が訓練内容を指示したのだが、その内容というのが――――。
「あー、なんかボク、いつも闘ってばっかいる気がする」
「まぁそう言うな。ほら、早く位置につけ」
――アルフォンスとアシュレイの“戦闘”。そしてそこから戦闘技術を学べ、というものだった。
訓練所の中央で向き合うアルフォンスとアシュレイ。
彼らを客席から見下ろす騎士達は皆動揺を隠せないでいる。
「おいおい……、王女様をアイツと闘わせて大丈夫なのかよ……」
「アイツ初心者だからって手加減するような奴じゃねぇだろ……」
「同じ特別部隊だからって、初めて闘う相手がアイツじゃ王女様も可哀想だぜ」
誰もがアシュレイは闘いに慣れていない、初心者だと言った。
“王女”という存在は、その存在こそ知られてはいたがその実体は謎に包まれていた。
というのも、アシュレイがメイドとして城内に潜む闇を見つけ次第抹殺するという任務を与えられた【
誰も知らない。
彼女がどんな日々を送り、そしてそこでどれほどの強さを得た者なのかを。
「両者、位置へ」
その言葉を合図に、アルフォンスとアシュレイはお互いに背を向け歩きだし、定位置までいくと再び向き合うようにして立った。
誰もが息を呑むような緊張感の中、闇の少年と【
「戦闘――――開始っ!!」
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