部隊配属、そして――
『それで? 今日はどうするつもりだ』
邪神竜はそうアルフォンスに問うと、アルフォンスは少し考えた
『そうだなー……。今日は僕自身のことをやろうかな』
『お前自身だと? 今のままでも十分だろ』
『確かに“今は”ね。――僕の本来の目的は、神を殺して、この世界を滅亡させることだよ? そのためにはもうちょっと強くなる必要があるんだ』
『…………』
邪神竜は僅かにため息をつくと、気だるげにアルフォンスに向け問う。
『――それで? 何をするっていうんだ』
その言葉にアルフォンスは小さく笑みを浮かべた。
そして腰に差された剣を鞘ごと抜き、そして言う。
『これを少しだけ短くして使いやすくしてさ、それでもう一本ふやしたいんだよね』
『双剣、ってやつか?』
『そ』
瞬間、アルフォンスの手にしていた剣はその数を増やし、その長さは彼の言ったとおり使いやすい程よい長さとなっていた。
アルフォンスは満足げに笑みを浮かべる。
『これでいいんだろ? 満足か?』
『剣に関しては満足かな。でもまだ、やらなきゃいけないことがある――』
空に日が昇ったばかりの、まだ僅かに夜の暗さが残っている頃。
その頃になると、騎士達の朝の訓練が始まる。
アルフォンスが訓練所に来た時には既に多くの騎士が集まっていた。
そしてそこには、騎士団長の火王の姿もある。
「遅いぞ、アルフォンス。何をしていた」
「寝てたんだよー。当たり前でしょ?」
「ようは寝坊か」
「そうなるね」
「……………」
相変わらず軽い調子のアルフォンスに、火王はもはや怒りを通り越して呆れの感情しか抱かなかった。
「……もういい。アルフォンス、お前は私の横に来い。今から部隊編成の結果を言う」
「はーい」
返事をすると、アルフォンスは火王の横に立つ。
火王はそれを見ると、言った。
「これで全員揃ったな。これより部隊編成についての話、及びその結果を言う。よく聞け」
「「「はっ」」」
騎士たちの声が響くと、花王は部隊の結果を彼らに言い渡す。
第一部隊隊長、ブレット・カルヴァート。
第二部隊隊長、セシル・オーティス。
第三部隊隊長、シリル・アーレン。
隊長となった彼らは、今回の編成試験に限らず、この騎士団の中でトップクラスの強さを誇る者達。
アルフォンスとも編成試験において戦闘を行なった三人だ。
闇の戦闘で騎士たちの人数が少なくなってしまった今、部隊は第三までとなる。
この三部隊に騎士たちは組み分けられた。
だが、その三部隊の中に、アルフォンスの名前が呼ばれることはなかった。
「……あのー、騎士団長さん」
「なんだ」
「聞き逃したのかなー。ボクの名前が呼ばれなかった気がするんだけど?」
「…………」
火王は一度息をつくと、騎士団全体にその声を再び響かせる。
「――――特別部隊隊長、アルフォンス・レンフィールド」
瞬間、ざわめきが起きた。
「この部隊は場合に応じて編成するものとする。その際に配属された者が誰であれ、この隊の隊長はアルフォンスだ」
「アーデント様……!!」
セシルが声をあげ何かを言おうと口を開くが、それに覆いかぶさるように火王が言う。
「ただし! この部隊は原則、私が命令したときのみ動くものとする!」
その言葉にざわめきは徐々に小さくなっていき、やがてなくなった。
各々がどんな考えをもったのかは定かではないが、それは“納得”を意味していた。
「今日からはこの部隊に分かれ、鍛錬するように。これで一時解散とする。各自、練習を開始しろ!」
その言葉を合図に、集団は三つに分かれ各部隊の練習が始まる。
「アルフォンス、……来い」
そんな中、一人アルフォンスは火王に呼ばれ、そのあとについていった。
二人が来たのは“また”というべきか、火王の執務室だった。
そこにはやはり宰相のアレックの姿もある。
火王は真っ直ぐ自分の椅子へ向かい座ると、アルフォンスを机を挟んだ向かい側に立たせた。
「……何。何か用でもあんの?」
そう問うアルフォンスを、火王はじっと見つめる。
その目は何かを見抜こうとしているかのようだ。
「……一つ、聞きたいことがある」
火王のその声はどこか低く感じられた。
「お前は何者だ。何を隠している」
「隠す? 何を――」
「ふざけるな。私はそんなふざけた答えを聞くつもりはない」
「…………」
アルフォンスの笑みが固まる。
「もう一度、問う。言え。お前は何者で、何を隠している。……本当の姿を見せろ」
アルフォンスの顔から、笑みが消えた――――。
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