第182話 事故4
ジャイ子が入院して一週間経ったころ。
「今日のMRIの検査の人は良かったわ」
父と交代して病院から帰ってきた母が言いました。
以前睡眠薬が効かなくて、検査の予約時間に間に合わず後日に回されたジャイ子。本日の検査では上手い具合に薬が効き、検査出来たようです。
「この前の検査技師さんはな……」
いつもギチギチスケジュールのMRI検査。そのときは特に時間が押していて、検査技師さんはかなりイライラしていたそうです。
その上、予約時間が過ぎているのにまだ寝ていないジャイ子を見て「ちゃんと薬飲ませたんですか!」と母に怒ったそう。(指定の時間に飲ませました)
後日変更にされたジャイ子の次の順番は、赤ちゃん(薬で眠った、ものすごく小さな赤ちゃん)だったそうなのですが。
この時、母が見ている前で検査技師の人は、赤ちゃんを検査台に放り投げたそう。
母はびっくりしました。
「あんなん、早よ産まれた低体重の子やで。寝てるけど」
それを聞いた私もびっくりしました。
そ、それは医療者として、いや、人間としてアカンやろ!
ウチがその子のお母さんやったら卒倒するわ!
寝てるからって何されるか分からへんな、と言う母。それに比べて今日の検査技師のお兄さんは愛想良くニコニコした方だったと。
検査技師さんもいろいろです。
主人が急遽下船して、帰宅しました。
神戸から戻ってきた長男を連れて、一緒に産婦人科の健診に行き、帰りにジャイ子の病院へ。
この時ジャイ子は回復し、ベッドから下りて病棟にあるプレイルームに遊びに行ってもいいことになっていました。
長男は子供のため、ジャイ子の病棟に入れなかったのですが、ジャイ子に面会室まで来てもらい、事故で入院以来初めて再会出来ることに。
私がジャイ子を連れて病棟を出た先の廊下に、すでに長男が待ち構えていました。
ジャイ子はお兄ちゃんの姿が目に入った途端
「ニイニイ!」
と、きやっきゃっ笑って、その場でジャンプを繰り返し全身で喜びを表現しました。
長男はと言えば。
なんだか恥ずかしそうに微笑んで突っ立ったままです。
まるで久しぶりに会った恋人同士のよう。
「なに、照れてんだよ」
側にいた主人に促され、おずおずとジャイ子に近づき二人で抱き合いました。
ああ、兄妹、てエエなあ。
なんとその日に出た検査結果で、ジャイ子は退院できることになりました。
頭の中の空気は全部抜けたのです。
そして、腕の骨折は通院でOKなレベルに。転倒や腕を上げる動作だけ気をつけるようにと。
あと何回かは通院しなければなりませんが、ようやくめどがつきました。
しばらくは保育所もお休みするけど、お家に帰れて良かったね、ジャイ子ちゃん。
10日間の入院生活でありました。
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