第154話 草笛
五月の田植えの時期のことです。
子供たちを外で遊ばせているときに、私の姉がタンポポの茎を笛にして鳴らしました。
ブィー。
のどかな初夏の太陽の下、素朴な振動音が響きます。
私と主人も姉にならってタンポポの茎を適度な長さに千切り、口に入れました。
先を少し噛んで、息を吹きます。
……私も主人も鳴らない。
あれえ? おかしいなあ。
子供の時、散々吹き鳴らしたのに。
もう一度新しい茎でチャレンジ。
少し、唇で挟む力を込めて。
ビー。
鳴りました。
ああ、思い出しました。この感覚。
主人にコツを教えますが鳴りません。
少し、優越感。
次に私と姉は、田んぼの中に生えている草をとりました。なんていう草かなあ。
麦笛と同じ要領で、中の茎を引っ張って抜き出し、残った茎を葉を折り返して口に挟みます。
ピー。
姉も私も、澄んだ音色が出ました。
主人も真似しますが、鳴らない。
「あれ、なんで鳴らないんだ」
次々に何本も千切っては四苦八苦していますが、全く鳴りません。
ふふ、主人に勝った。
些細なことですが、猛烈に優越感を感じる私。
昔はいろんな草笛に挑戦したなあ。
椿の葉を丸めたやつとか。あれは、大きなラッパのような音がします。
ほおずきには、何回も挑戦しましたが、出来た試しがありません。
笛を作る前段階で、ほおずきの実を長時間揉んで柔らかくしますよね。私はあの段階でいつも飽きてしまって、放り投げてしまうのです。
今度、ジャイ子と共にほおずきの笛に挑戦してみようかな。
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