第148話 お弁当
秋は遠足シーズンでした。
ジャイ子はまだ小さいので保育所付近を散歩して、部屋の中でお弁当を食べる、という行事がありました。
決戦のお弁当デー。今度は失敗してなるものか。
気合を入れようとして、気がつきました。
ジャイ子は定番のお弁当メニューというものを食べない、ということを。好き嫌いのある子で、からあげ、卵焼き、ウインナー、を食べようとしないのです。
長男にもその傾向がありましたが、ジャイ子が好むのは、胡瓜の酢の物、ひじきの煮物、切り干し大根、きんぴらごぼう、魚の塩焼き……といったもの。
出汁と油揚げ、といった味付けが好みのようです。
(酢の物が好きなのは珍しい。普通、子供は生まれつきに酸味=腐敗したものとインプットされているので、嫌がる傾向があるそうなのですが。ちなみに苦味=毒、として自然に子供は嫌がるそうです)
私がそういうメニューを多く作る傾向にあるからだろうと思いますが。反省しております。反対に私はサラダを作ることが少ないので(生野菜より温野菜が好き。主人はサラダ好きなので、主人がいるときにしか作らない)子供たちはあまりサラダに手を出そうとしません。
何を入れよう、と私は悩みました。
この前のような屈辱を味わうのはごめんです。
「今晩の夕食、大根と人参の煮物と、サバの塩焼きやし。あとはそれとヒジキでもつくって入れていきや」
と、母。
「そんなん、夕飯の残り物入れてきたんやな、て思われるやん! 写真に撮られんねんで? 手抜きした、て思われるやん!」
「だって、夕飯の残りもんやん。ヘタに変わったもん入れたら食べへんだけやで」
「……」
「△△が好きな食べ物入れたらな」
「……」
結局、本当に夕飯の残りの塩サバと大根と人参の煮物と、ひじきの煮付けとおにぎりとバナナをお弁当に詰めました。
だって、しょうがない。
これがジャイ子の好きなメニューなのだから。決して、手抜きをしたわけではないのだ!
数日後、例により写真集がジャイ子のクラスのお部屋に置いてありました。
豪華なキャラ弁が並んでいる中で、ジャイ子のお弁当は茶色で質素。
……ああ、なんかもういいや。
だってみんなのようなお弁当作っても、食べずに余るだけやし。
私は、悟りをひらいたのでした。
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