第122話 いろいろな船
息子は宿題で毎日、国語の教科書を音読しております。
チェックカードがありまして、声の大きさ、姿勢の良さ、詰まらずに読めるか、を私が聞いてチェックしております。
スムーズに読めることがだんだん増えて、ああ成長したなあ、と感じ始めた今日この頃。
いつものように息子が音読を始めました。
「いろいろなふね」
なんだと?
私はあわてて息子の教科書を覗き込みました。
開いたページには、なんと船の写真が!
おお!
私は日本の義務教育を見直しました。
ようやく日本も、イギリスのように船乗りさんへの感謝の念を子供時代に植え付ける重要性を理解したのだな。
やるじゃないですか、ゆとり!
ホクホクしながら、早速読んで見ると。
1ページ目は、フェリー。
あれ? 意外やな。
一発目は絶対、貨物船か漁船やと思っていたのに。
あえて、フェリー?
ま、まあ、サスペンスドラマではよく出てくるし、その関係かな? 一番身近に感じられるからかな。
『おかあさん、昔、これに乗っててんで』
『え? うそ、おかあさん、これ、乗ってたん? かっこええ』
『(ふふふ、別にかっこよくもないけど)かっこええか? この中のレストランで働いとってん』
息子の反応にまんざらでもなく、私はにやけながら次のページをめくりました。
カーフェリー。
……why?
いやいや、さっきのフェリーと同じくくりでええと思うけど。なんで?
フェリーとカーフェリーを何故わざわざ分ける必要があるのでしょう?
少し疑問に思いながら、隣のページを見ました。
漁船。
やっときたか。
でも、三番目? なんか腑に落ちんなー。
……ああ、あれか!
だんだん盛り上がって最後に真打ち登場、てやつか。考えたな。
そう思った私は、わくわくして次のページをめくりました。
消防船。
へっ?
虚をつかれました。
ま、また、マイナーな……。
ウチでもこの船見たことないんですけど。
まあ、火事の時しか出動せえへんからね。
いやしかし、なんでまたあえてこんな船を載せたんやろ……。
と、隣のページに目を移した私でしたが。
そこには何も書かれてませんでした。
……おしまい?
『貨物船がない!』
全力で思わず叫んだ私にビクッとする長男。
『え?』
『貨物船がない! 一番大事な! お父さんの乗ってる船や!』
運輸の肝腎要の貨物船が何故載っていないのか。こ、これはアカンやろ!
『ちょっと! 貨物船が載ってへんねんけど!』
ショックのあまり、誰にともなく叫ぶ私。
感情がおさえきれません。
一番大事な船でしょうが。なに、すっ飛ばされてんの?
『お父さんの乗ってる貨物船が載ってへん! て、明日先生に言うとき』
先生に訴えてもしょうがないのですが、そう言わずにはおられなかった私。
だって、がっかりです。信じられません。
この仕打ちに!
……後日、主人と話しました。
『消防船? また、マイナーなもの、持ってきたな。アレ、絶滅危惧種だよ』
ウチと同じリアクションやな。
『ひどくない? なんで、貨物船を抜いたんやろ』
『船を知らない人が書いてるからだろ』
ああ、そうか。そういうことか。
フェリーとカーフェリーを分けて載せるくらいなら、貨物船以外にも載せるべき船はあります。
水産庁、気象庁の観測船とか。海上保安庁の船とか。
タグボートだって。(港に入ってきた大型船の補佐をする船です。大事な船です。主人が一度乗っていたことがありますが、かなりハードな仕事。でもその分、お給料はいい)
船の存在を知らしめる折角の機会だったのに、残念な感じ。
来年度には教科書が改稿されないかなあ。
(フェリーとカーフェリーの件については誰もがつっこむところだと思いますよ、文部科学省さん)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます