第111話 硬派の入り口と出口
先日、地域のお祭り(※御供(ごく)まきです)に行く直前、長男が言いました。
※ 餅まきとも言います。神社で餅やパンやお菓子、ラーメンなどをばらまくのをみんなで我先にと取り合う、非常にエキサイティングな行事です。
「女子(じょし)来てたらどうしよう。嫌や」
「……なんで」
「一緒に遊ぼうとか言われたらかなん。女子と遊ぶの嫌や」
傍で聞いてた叔父が、『そりゃそうや。怖いもんな』と笑っていましたが。
私はびっくりしました。
つい、この間まで女の子と仲良く分け隔てなく一緒に遊んでたやないか、と。
いつの間にか『女の子』が『女子』という呼び名に変わってるし。
こういうのは、小学校入学が転機になるのでしょうか?
保育所の頃とは違い、先生が、皆のことを女子、男子、と呼ぶからでしょうか。
大体この頃から、女子は女子、男子は男子で遊ぶようになりますね。(男女七歳にして同席せず?)
ーー苦い経験を思い出しました。
私には近所に、一つ上の幼なじみの男の子がいまして、毎日のように田んぼやドブでザリガニとかオタマジャクシをとって一緒に遊んでいたのですが。
その子が小学校に上がるなりその関係は終わりました。
『もう小学生やから、これからは女の子と遊ばへんねん、て言ってるわ』
保育所から帰って、いつものようにその子の家に迎えに上がりましたら。その子ではなく、その子のお姉ちゃんが出てきて私にそう言いました。
昨日まで普通に、毎日遊んでいたのに。
突然の拒絶に私はショックを受けて、すごすごと帰りました。ものすごく悲しくなって、軽トラックの荷台の上で体育座りをして、一人静かに泣きました。
それからその子の家には、少し離れた家の男の子が遊びに来るようになり、私も少し離れた家の女の子と遊ぶようになりました。ーー
私の記憶では。
小学生の男子と女子は相容れないものだったように思います。
『アホすぎて男子ムカつく!』『女子、なんやねんあいつら』という感じ。
中学校に行くと、そういうのは多少緩和しますが。
男子というものは正直であり、可愛い女の子には優しかったですが、そうでない子にはかなり辛辣だったように思います。
(反対に女子は男子に対して容姿で態度をあからさまに変えることはしませんよね。そういうことを考えると、やはり女子は精神的に男子より大人だと思いませんか)
高校になりますと。
カップルなんかが誕生してくるわけですが。
それでも、基本男子は男子、女子は女子と固まります。そしてまだ『女子なんて』みたいなオーラを放つ硬派な男子も少数ですが残っていたように思います。
それが高校を卒業しますと。
いきなり。
男子はすべての女子に優しくなります。
急に一斉に紳士化して一体、何が起こったのですか。去勢でもしたのですか。という感じ。
気持ち悪いほど異様です。
ーー大学ぐらいになったら、ああなるのは、なんでやろな。
電話にて長男の成長の変化を報告したあと、答えは分かっていますが、一応主人に聞いてみました。
ーーああ、それは大人になってくると、やっぱり外見だけじゃなく中身も大切だと分かってくるのと。
ほう。
ーーまあ、ヤレるかもしれないと思うから。
やっぱりな。
硬派の入り口に入ってしまった長男。
成長してしまったんだなあ、と少し切なくなりました。
はてさて、将来いつ硬派を卒業するのかも気になるところであります。
それにしても。
なんの打算や遠慮もなく、純粋に男女入り乱れて遊ぶことのできる幼少期というのは貴重な時期だったんだなあ、と思いました。
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