第106話 子供の性別

 やはり、おなかの赤ちゃんの性別がどっちであるかは皆さんが気になるもの。

 長男を妊娠中、6か月あたりから先生に聞いてみました。


「はっきり分かるのは8か月あたりだから、そのときに聞いてね」


 と、先生にそう言われましたが、毎回健診のたびに聞いてしまいました。

 私自身は別に性別はどっちでもよかったのですが。

 主人も両親も周囲の人々も、健診に行くたびに、性別はどっちなの? と聞いてくるからです。

 しかし、いつも長男は位置が悪く、後ろを向いておりましたので肝心の股間が見えませんでした。


 8か月目、直前のことです。

 健診に行ったその日、病院がものすごく混んでまして。いつもの先生だとかなり待たないといけないと思うので、別の先生にされますか? と受付の方に聞かれました。

 はい、その先生でお願いします、と私は答えました。


 いつもよりも早く名前を呼ばれ、その先生に健診をしてもらった私。

 性別はどっちですか? と聞きました。


「そんなのどっちでもいいじゃない!」


 大きめの強い口調でそう答えられ、思わずびくりと、固まる私。先生は我に返ったように、そんな私にやさしく諭してくださいました。


「健康で元気に産まれれば、男か女かなんてどうでもいいことだと思うんだけどね……13 18トリソミーの子のお母さんなんてかわいそうなんだよ」


 知ってました。ちょうど専門学校で勉強したばかりでしたので。


 生命活動が弱く、おなかの中でしか生きられない染色体異常の赤ちゃんです。


 もしかしてちょうど私の直前の妊婦さんがそのママさんだったのかもしれません。

 その先生はすごく優しい先生だったのでしょう。

 そんな質問をした私は、ものすごく能天気に見えたに違いありません。


 確かにそのとおり。

 どうだっていいことです。





 ーー今でも。


『女の子が欲しかったのに。男の子だったからショック!』


 なんて話してる妊婦さんを見ると。

私はこの時の先生の顔と言葉が思い浮かぶのです。


 二人目、三人目を妊娠中の私に、皆さんが『性別はどっち?』『どっちが産まれてほしい?』なんて聞いてくださいましたが。


 私は『どっちでもいいです』と答えるようにしていました。

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