第67話 虫愛ずる姫君

ウチのジャイ子ちゃんはとにかく虫が大好き。

 私の姉が長男のために買ってくれた図鑑があるのですが。

 虫、恐竜、動物の三種類の図鑑。

 恐竜、動物の図鑑には目もくれず、ひたすら無視。

 ひたすら虫の図鑑をすでにページが千切れるほど愛読しています。

 あー、あー、といつも虫の図鑑を読むようにとひきずりながら持ってきます。


 いつでしたか。

 私の姉にジャイ子が甘えてひっつき、離れないときがありまして。

『△△はひっつき虫やなあ』

 という姉の言葉の『虫』に反応し。

 は、と思い出したように姉から離れると図鑑を探しに行きました。


 いつも図鑑をみるときは、私と長男とジャイ子の頭をくっつき合わせ、三人で図鑑をのぞきこみます。

 ページをめくるたびに、ウワアー、キャー、とジャイ子は歓声を繰り返します。

 そしてそのページの虫のテーマソングを歌え! と私と長男に強制してきます。


 例:ちょうちょなら「ちょーちょ、ちょーちょ……」、ホタルなら「ほー、ほー、ほーたるこい」、トンボは「トンボのめがねは……」という感じです。


 歌の流れる図鑑を身体でリズムをとり全身で楽しんでいるジャイ子。

 そういうのを繰り返すうちに最近ではこの虫はなあに? と聞くと、ちょーちょ、とんぼ、てんとうむし、くわがた、とはっきり指していえるようになりました。

 そんなジャイ子ちゃんの特にお気に入りの虫さんは。

 クモ! アリ!


(えー。どちらもおかあさんが大嫌いな虫さんやねんけど……)


 何がいいのでしょうか。クモとアリのページに来た時のジャイ子の反応は尋常ではありません。

 うっきゃー!!

 それはそれは嬉しそうな声をだして(他の虫のときより3倍ぐらいの大きさの声)手を叩いて大興奮。


 テレビの『ワイルドライフ』という番組でアリやクモがとりあげられた時はすごかった。

 目を輝かせ、ジャンプして、画面を叩いて、雄叫びをあげまくり。

 画面にお目当ての彼が現われたときのジャニーズファンの女の子のような反応っぷりです。

 ちょっと見てるこっちがひいてしまうくらいの喜びようなのです。


 でも、やはり親ならこう思ってしまいますよ、ね。

 ちょっと、ちょっと、なにこの子、将来『虫博士』になっちゃうんじゃないの、と。


 私も昔は虫が好きで名前をけっこう言えました。

 その中でもアリとクモだけは本当にもう大嫌いでした。いまでも大嫌い。むしろ怖い。


 手塚治先生の漫画だったかな。

 人はクモが嫌いなタイプと、ヘビが嫌いなタイプに分かれるという話が出てきました。

 正しいんじゃないでしょうか。

 私は反対にヘビは好きで可愛いと思いますからね。ペットにしちゃってもいいと思います。一度、沖縄料理のウミヘビとか食べてみたいと思うくらいです。(ヘビは男性の象徴とも聞きますが……それも関係するのか?)


 アリは本当に大嫌いなのですよ。

 原因は昔、金曜ロードショーで放送されていた映画「黒い絨毯」(軍隊アリが襲ってくる話)「放射能ⅹ」(放射能で巨大化したアリの話)を観たせいだと思うのですが。

 巨峰を思わせる黒い大きなアリも。小さな赤いアリも。

 身の毛がよだつほど嫌いです。怖い。(SKY WORLD のシアンと一緒)

 あのパリパリした身体。這い上ってくる感じ。(私が感じるクモとアリの共通点)


 子供のころ、遠足が苦痛でした。

 いえ、楽しみにしていましたけど、苦痛なのはお弁当の時間。


 だって、外でご飯たべるんですもの! 奴らが這いまわっている場所で! さあ、よってらっしゃい、みてらっしゃい、みたいな感じでお弁当を広げて!


 笑えますけれども、遠足のお弁当を食べている過去の自分の写真を見ると。

 いつも私、泣いております。(もしくは立って食べている)


 だって、怖いんやもの! 這い上ってくるんやもの!

 一度先生に『私、屋内とかバスの中で食べたい』と訴えた気がするなあ。(多分、ダメだと言われた)

 そういう理由で秋と冬が好きです。やつらがなりを潜めますからね。

 春と夏、嫌いです。あいつら超、元気ですからね。ハエとかもわきますしね。


 ジャイ子と図鑑を見る時もアリのページはこわごわと覗きこみます。いえ、本当はそのページにも触りたくないのですが。

 それでも目にするようになって、彼らのことについて新たな知識を得ました。

 女王アリと働きアリがいて。それでたまにオスが生まれて、交尾で結婚飛行とかするんやったかな、とおぼろげながらは知っていたのですが。

 世には(アミメアリ)働きアリしかいない一族もいるのですね。知らなかった!

 一族すべてワーキングウーマン。みんなで協力し、ばりばり働いてばりばり子供を産む、育てる。仕事と子育て、両立させてる。はあ、すごい。(オス、いらないんじゃないの? 一応いるのかな? そこまでは詳しく図鑑にはかかれていませんでした……あとで調べると、一応オスのアリは消滅はしていないようです。まれに生まれると。ただ、存在意義はなく、お相手もおらずウロウロして一生を終えるとか。不憫!)


 とりあえず、虫が大好きジャイ子ちゃん。

 大きくなったらアリが飼いたいとか、クモが飼いたいとか、言わないでね!









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