第64話 あやとり

この間、保育所参観に行って参りました。


 長男の年長組さんは、一人一人得意なものを両親が見守る中、皆の前で披露してくれまして。


 長男は独楽!

 びっくりしました。


 この子、コマ回せたんか?! 家で見せてくれへんからお母さん知らんかったわ!


 コマを床から下敷きで持ち上げて、手に移し手の上で回し続ける(一瞬だけですけど)という技も見せてくれました。


 はあ、すごいな。練習したんやな。

 感心しました。

 その他の子は、お手玉をする子、あやとりをする子、けんだまをする子……。

 自分の技をいろいろと披露してくれました。なんだか懐かしくなりました。


 特にあやとりは冬になると、休憩時間中、教室のストーブの前で女子で集まってみんなでしたなあ。(完全に女子の遊びでしたよね。男子はやっぱりああいうのは興味がないですよね。……それにしても男子、女子って。懐かしい言葉の響きです 笑)

 男子はたった十分の休憩時間でも速攻で運動場に飛び出し、ひたすらサッカーをしてましたよね。そして泥だらけになって帰ってくる。(男子が男子たるゆえん、かなあ)



 そんなこんなを思い出し、今日家で毛糸を見つけた私は久しぶりにあやとりがしたくなっちゃいまして。

 長男を誘いました。二人あやとりをしよう、と。わりと乗り気の長男。


 早速、毛糸を切り、輪にした私は手首にかけまして……。

 あれ?

 どうするんだっけ?

 最初の形、作り方が分からない。

 出来た形を見ればどう取るか分かる自信があります。

 でも。

 その最初の作り方、忘れてる!


「お母さん、最初、どうつくるんやったっけ?」


 そばにいた母に頼ってみました。


「はあ? 何言ってんねん。最初は……」


 私が渡した毛糸を受け取る母。

 ……母も忘れてて出来ませんでした。


 忘れてる!

 あんなにやったのに。

 一人あやとりでも四段梯子とか、箒とか、蚊とか、蜻蛉とか。

 色々作れたはずなのに、すっかり忘れてる!

 愕然としました。


 不信そうな長男に、ちょっと待って、と必死に思い出そうとする私。

 あ! 思い出した!


 両手首に一周毛糸を巻いた後、両中指に反対側の手首の毛糸を交互にくぐらせます。

 できた!

 確か『逆さ橋』やったかな?


 さあ、とってみるがよい! 長男よ!


 長男につきだしますが、分からへん、との返事。

 口で説明しますが、いまいち伝わりません。

 ああ、もう!


 母に取ってもらい、見本をみせました。『ダイヤモンド』ができました。


「ええな、これはこうとるねんで」


 私がとり、次に出来たのは『ひし形』。そして次に『カエル』。また、『ダイヤモンド』に戻りました。さっき見ていたはずの長男にとらせようとしますがまごまご。

 あー、あかん。少し誰かがやっているのを見て覚えたほうが早いかな、と思っていると。


「だあーーーー!」


 ジャイ子登場。

 傍らで見守っていたジャイ子が手を突っ込み破壊しました。

 そうやな。ジャイ子。

 女の子やもの。見てたら、自分もしたくなるわな!


 ジャイ子登場であやとりはそれでおひらきになってしまいました。

 傍で見守っていた祖母があとは一人で蜻蛉とか、四段梯子作っていましたけれども。(やはり、昔の人は何でも記憶に残ってるんだなあ)



 二人あやとり。

 同じことを延々と繰り返すのが面白いの?

 と思われる方もいらっしゃるでしょうが。(主人もそう言った)


 面白いんですよね。なにが面白いのかといわれると困るのですけれど。

 男子のキャッチボールと同じようなものですよ。きっと。

 とって、渡して、とって、渡して。


 そういう中でも、たまに斬新なとり方を考えて試してみたり。

 今まで見たこともないような形が出来上がるのですが、それでも相手は果敢にその形に挑むのです。

 複雑な形に苦心しながら、お互いなんとか組手を考えて続けます。

 すると。

 あるとき、なぜかひょいと基本の形に戻ったりすることがあります。

 おお!

 そのときの感動というか。してやったり感、といいますか。

 思わず声が出て、顔を見合わせてお互いの健闘をたたえ合います。

 ……面白いんですよ。(男子には分からない乙女心的なものが燃えるような)


 今の子であやとりする子なんて少ないんじゃないのかなあ。

 どう比べても、ゲームのほうが断然、面白いですしね。今の時代、仕方がないかなあ。

 あやとり、て外国にもあるのかなあ。日本だけの遊びなのかなあ。

 これはかなり知的な(理系ですよね。折り紙も)遊びだと思うのですけどね。


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