第53話 歩道橋2
引き続いて前回と同じ歩道橋の話です。
長男が二歳くらいのときでしたでしょうか。
長男は歩道橋の上から下を走る車を見るのが好きで、いつも歩道橋を渡りたがりました。
保育所からの帰り道、私と手をつないで階段を上り、上の渡り道で何回も私の掛け声でいったりきたりのかけっこを繰り返しました。
下りの階段は十回ぐらい上り下りを繰り返してから、帰りました。(疲れさせるためです。このおかげで長男は布団に転がすと毎日秒殺で寝ました。そんな日々を繰り返した結果、体力がつきについて、なかなか疲れなくなりました。それを更に疲れさせるために、家までダッシュで帰ったり、マンションの階段をかけあがらせたりなんかして……ひたすらイタチごっこを繰り返しました。笑)
さて、この歩道橋でおこったある日の出来事です。
気持ちのいい春の日中。
いつものように長男と歩道橋をのぼり、上から下を走る車を見下ろし、さて家に帰ろうとしましたら。
「ママー」
長男は欄干のあいだに頭を突っ込んだまま、その場を動こうとしません。
「こっち、きいや」
言っても、動こうとしません。
なんだ?
長男のところに戻った私は、やっと気が付きました。
|頭がはさまった(・・・・・・・)……!
そうです。
長男は、他の子より頭が大きめです。
すっぽりと欄干の間に頭が挟まって抜けなくなってしまったのです。
わたしはあわてて長男を引っ張りました。
「イタイイタイ」
訴える長男。
そのとき。
「どうされました?! |奥さん(・・・)!」
ちょうど、近くに立って下を走る車の数を数えていたらしき? おまわりさんがこちらに気付いて走ってきてくれました。
お・く・さ・ん。
なんて、甘美な響き。
若くてイケメン、ハマっこ巡査にそう呼ばれちゃいましたぜ! (いえ、奥さんとしか呼びようがないんでしょうが)
いえ、ときめいている場合ではありません。
イケメン巡査と二人で、息子を引っ張りました。
巡査が力いっぱい欄干を広げ、私が息子を引っ張り、なんとか息子の頭が抜けました。
良かったです。ひやひやしました。
まさか、このままレスキュー隊のお世話になって欄干をウイーンと削ったりしなきゃいけないのかと一瞬思ってしまいました。
「ありがとうございました」
「ああ、よかった。お気を付けくださいね」
さわやかな満面の笑みで、では、と去る巡査。
かあっこいい……。若い……。
私は息子とともにその後ろ姿をうっとりと見つめました。
……そんなわけでして、歩道橋を見ると私はいつもこのときの情景とときめきを思い出すのです。(なんじゃそら)
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