第46話 星の王子様

皆さん、物事にはタイミングがかなり関係すると思いませんか。

 言葉をかけるタイミング、出会いのタイミング。

 タイミングにはいろいろあると思いますが、本を読むタイミング、というのもあると思うのです。


 私の中で一生に一度の本というのを挙げるならば、ディケンズの「大いなる遺産」かなあと思います。(これは高校の時に読みました)

 しかしあの名作も高校生であるあの時に読んだから心に響いたのであって、今初めてあの作品を読んだとしたらあの時ほど感動するかは疑問です。


 名作とされてる本でも、読み手本人のタイミングと合わなかったら心に残らないこともあるでしょうし、話題に上らない、多くの人たちから酷評されてる本であっても、読み手のタイミングとぴたりと合えば、その読者にとって生涯の一冊、となり得ることはあると思います。


 要は、タイミング。読者の好みもあるでしょうが、その時の読者のコンディションも、本と読者の関係性に大いに関与すると思うのです。

あの時読んだときは面白くなかったのに、あれ、今読んだら面白いぞ、というような。

 ですから、ぴったりの時期にぴったりの本に出会えるということは本当に幸運なことで、人と人の出会いのように奇跡だと思います。



 さて、今回のタイトル、『星の王子さま』ですが。


 この不朽の名作。



 実は、私には。

 何が良いのか。

 全然。


 分かりません。




 初めて読んだのは、小学二、三年生のころだと思います。小学校の図書室で借りて、読みました。


 ……うん、これ、面白くないなあ、と。


 分かりますよ。あんな詩的な内容は、ちょっと低学年には理解できないかなあ、もう少し大人になってからじゃないと、あの良さは理解できないかなあ……ていう話しですよね。


 あのときはTVのCMで確か、『星の王子さま』が話題に上った時でしたんで、私は何故こんな話がそんなに有名なんだろうと、不思議に思いました。


 その時ハマっていた、『クレヨン王国シリーズ』や『ぽっぺん先生シリーズ』の方がよほど面白いし、感動するのに、と。


 ※私的な思いを吐かせていただきますと、上記の二作品は、永遠に残すべき児童文学だと思います。特に『クレヨン王国』を読んだことのない方は『ブラックジャック』を読んだことのない方と同じ位、人生を損していると思います……(と、言っちゃいますぜ!)



 そして、中学生の時でしたかね。

 同じようにこの作品を、図書室で借りて読みました。


 それが……心に残らない。


 高校生の時も、本屋さんで立ち読みしたんですが。


 ふーん、という感じ。だったと思います。

(内容が頭に残っていないのです)



 おかしいなあ。タイミングの問題かと思ったのになあ。

 大好き! いい本! 深い! ていう方が多いのになあ。

 三回試しても、ことごとくハズレるなんて。


 精神的に未熟なのでしょうか。

 それとも、他の方と比べて私は感受性のアンテナが少し違う方向を向いているのでしょうか。


 エエ歳になった今こそ、読んだならば感動するのでしょうか。

 深く考えさせられるのでしょうか。


 あるいは、私には縁がないというか、相性が悪いという本なのでしょうか?

 そういう本、ていうのはあるでしょうね。きっと。



 ……主人に、『星の王子さま』についてどう思うか、聞いてみたんです。

 ……語りだしました。(おおっと……)



 ーーアレは、人間の『本能』だよ。『欲』だよ。


 ほ、本能?


 ーー夜間飛行はさあ、蟹工船みたいな感じで……


 蟹工船? 読んだことあります。闘争モノ……?


 ーー◯◯もさあ、胸がないとかコンプレックスを抱えてるけ……(中略)背伸びしようとするけど、◯◯は◯◯なんだから、そのままで……(中略)◯◯と子供二人がいて、自分はすごく幸せだと……(略)


 な、なんかすごい話になってしまったんですが。そ、そんな内容だったんですかね。星の王子さま。


 主人は『星の王子さま』が好きなようでして。

 病んでるときに、読むと浮上すると申しておりました。


 じゃあ、私もヘコんだときに今度、あの作品に再チャレンジをいたすことにしましょうか。




 ーーところで。


 みなさんの、生涯の一冊は何ですか?



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