第39話 ジョニデ

みなさんに、告白します。

私……実は。


ジョニデと、


までいったことがあるんです。


……キャ♪


本当ですよ。

ジョニデ、て、あのジョニデですよ。もちろん。


ブラックパール号の船長をしていたあのジョニデですよ。

でも、その時は彼はまだキャーキャー言われていませんでしたよ。

その海賊映画が公開される以前の話ですから。


私は小学生の時から、「シザーハンズ」を演じていたジョニデをカッコいいなあとすでに目をつけておりました。


高校生ぐらいのときに、「ナインスゲート」という映画を観まして。

主演のジョニデがもう、私のど真ん中ストライクのキャラクター! で、それから一気にハマりました。


かっこいいですよね。彼。

そして、かわいくもありますよね。

あとはなんともいえない男の色気、がね。


どうして彼と私がそんなことになったか……ですよね。

それをこれからお話しますね。


ーーーーーー


私は、クローディアという役をしておりました。

黒髪、ロングヘアの美少女です。

ジョニデは名前は忘れましたが、私の義理の父親役。

それなのに、私たちの年齢はあんまり離れておらず、少々背徳的な雰囲気を漂わせていました。


何故か知りませんが、私はマフィアに狙われまして。

ジョニデは身体をはって私を守り、銃撃戦に応じ、私と逃亡。


そんな日々を続ける間に、義理の父と娘の間には、あってはならぬ感情が芽生えまして。

ある日、マフィアから逃亡中、ついにそんな展開を迎えてしまったのです……!




追ってきた敵の一人を射殺し、私をひきよせるジョニデ。


「クローディア!」


彼にしがみつく私。

見つめあう二人。


(きた? きたきた?)


ああ……!

引き寄せられるように私と彼はキスを交わします。


(キャーー!キタキターー!)


ふいに抱き上げられる私。

そのまま、彼の腕に抱かれて、移動します。


そして……


ベッドにゆっくりと寝かされる私。


(キャーーーー!! きゃーー! キャーーーー!!)


私を見下ろして、優しくジョニデが微笑みます。


私の髪を撫で……頬を包み……

ジョニデがささやきます。


『目を閉じてていいよ』


て、ね。


それで、それを聞いた私はね。……




そんな、もったいないことができるかあああ!


てね。


目を、ぐわっ、と見開いたのです。


そしたら。


いきなり、あたりは真っ暗に。


え? なに? なに?

ブレーカーが落ちたの?


真っ暗な中、私は訳が分からず自失しました。

そして、数秒後。


……NOーーーー!!


気付いた私は悔しさのあまり、悶絶しました。


せっかく、せっかく……っ!

ジョニデとデキるとこやったのにぃーーっ……!


ウチのアホーー!

目が覚めてもうたあーーっ……!


船内ベッドの上でのたうちまわりました。

(そう。乗船中でした)


どんなに悔しがっても、あとのまつり。

必死で目をつむっても、もうジョニデは現れない。(というか、悔しすぎて眠れない)


あんなに悔しかったのは人生で初めてかも。

ちょっと本気で泣いてしまいました。


ジョニデ……! プリーズ、ワンスモア……!


でも彼は、それから二度と私の前には現れなかったのです。


……ジョニデのアホ。

目をつむれとか言うからじゃ。

かえって目が覚めてもうたやないかい。


ああ。

おとなしく目をつむっとけば良かったのかも。

姿が見えなくても、ジョニデの感覚だけでも味わっとけば良かったぜ。


その後、いろいろと反省しましたが。

いつか挽回できる日はくるのでしょうか。

(ずっと待ってるよ! ジョニデ!)



そう。

まあ、20歳そこそこの女子が見る夢なんてのは、毎日こんなもんですよ。

(え? ちがいます?)


でも、胸をはって少し自慢しちゃいますよ。


私、あのジョニデと寸前、までいった女なんです。


うらやましいでしょう?













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