第493話

「たとえ大王が動かずともヴェルフデックにハウツローレンがついているように、ラスターにだって協力する家はあるはずだ。それこそ他の四選侯達はハウツローレン家が利するのを黙って見過ごしはしまい。とくにロマリアのエステネーゼ家やウェスパニアのアルブケス家などはな」

「たしかにフラーヌのマールやドッシェのドルクの影響力が強まるのは、ロマリアやウェスパニアの人間達にとっては面白くない事態でしょうね。だけど彼らは動かないわ」

「何故そんなことが言い切れる」

「大伯様は嫌われ者だからよ」

 シルボラ伯は伯爵位でありながら連邦に属する一国を治める者として『大伯』と呼ばれることがあった。

 むろんベルティーナがわざわざそこに『様』までつけ足して呼ぶのは敬意からなどではない。

 嘲笑的な笑みを浮かべる女にレグスは問う。

「どういう意味だ」

「簡単なことよ。連綿と続くユロアの貴族社会において、たかが百五十年ばかり調子のいい貴族なんてただの成り上がり者。それを面白く思ってない人間はごまんといる」

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