第478話

 いくらマルフスの事があろうと、ファバにとって彼らの言葉は自身が足手まといだと言われたにも等しい。

 実際、仲間達の力量を鑑みれば少年の存在は足手まといに違いなかった。

 その事を自覚していたからこそ、彼は唇を噛みながらもこれ以上は強く異を唱えることができない。

「これに関しては変更はなしだ。バダラム平原は避け、グルドゥアの森を抜ける。いいな?」

「ああ……」

 無論、レグス達とてこの決定に少年がどれだけ悔しい思いをしているかは察している。

 それでも、彼のちっぽけな自尊心を満たしてやる為に闇雲に危険を冒すような真似を許せるはずがない。

 計画の決定権はレグスにある。

 つまらない意地を張る為にどうしてもその決定に従えぬというのなら、ファバはこの壁の地に置いていかれるだけの話であった。


 作業はそれからも最終的な判断はレグスが下す形で進められていった。

 彼は壁の民の資料に記載された新情報はもちろんのこと、セセリナやカムの技能を加味し、未熟なファバのことも考慮しながら、より適した経路へと変更を加えていく。

 以前の計画から変更を加えるのは経路だけではない。

 必要となるであろう食糧や荷の計算。緊急事態での経路変更の想定までもやり直し、徹底して旅の計画を見直していく。

 そして四人は時に意見をぶつけ合いながら、計画を確実により優れたものへと洗練させていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る