第466話

 その答えを侮辱ととったのか壁の王が合図を送ると、衛兵達が得物の切っ先を向けてレグスを取り囲んだ。

「お前は我らに言う。真に為すべきことのため、己の誇りすら捨ててみせよと。ならばそうして大言を口にするお前自身はどうなのだ。まさか知らぬ顔で、壁を越えるなどと言うまいな。我がここで跪き助けを乞えば、お前も己の野望を捨て星の声に耳を傾けるのだな、レグス・ロカよ!!」

 あと一度、王が合図を送れば衛兵達は容赦なく目の前の男を斬り刻むだろう。

 生半可な答えは許されない。

「よく言葉を選び、発言するといい。次の言葉が最後のモノとならぬように」

 荘厳たる口調で戒めながら問う壁の王。

 静かな間があった。

 重い、重い、静かな間が。

 静寂の中でその場の誰もが男の答えを待っていた。

 その空気にまるで怯む事すらなく、レグスは真っ直ぐと王を見据えて力強く断言する。

「たとえ天が定め、星が告げようと、進み行く道は俺自身が決める。偉大なる戦士達の王ゴルゴーラよ、俺は壁を越え古き精霊の国を目指す。たとえお前達がここで何を望もうともだ」

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