第410話
迷いを押し殺し、無謀を為す手助けをするその術に入る前にセセリナはレグスに注意を与える。
「いくら相手があなたと言えど、心に恐れや疑いを抱いては、この方法は上手くいかないわ。私を信頼して頂戴、レグス」
「何度となくお前に救われた命だ。今さら何を恐れ疑うものか」
それは心の底より出でた紛れのない言葉。
レグスのセセリナに対する信頼に嘘はない。
「そう……」
それがわかるから、彼女は自然とその言葉を口にしていた。
「ありがとう」
そして精霊の少女はレグスの体にそっと手で触れ、古き言葉を紡ぎだす。
レグスにはわかった、己の内に宿るセセリナの力が彼女の詠唱に共鳴している事が。
同時に彼は不思議な感覚に襲われる。
目の前の少女との境が消え、まるで一つの存在になってしまうかのような感覚。
それがどんどんと強くなっていく。
不快さはない。まるでそれが当たり前の事であるかのように、もとからそうであったかのように、互いの存在が溶けて混じりいく。
その感覚にわずかに惑う男に対して、少女は優しく微笑んだ。
「リティメーレ」
――大丈夫だから。
己に向けられた知るはずもない精霊の言語をレグスは自然と理解してしまう。
それがセセリナの術の影響によってもたらされたものである事は明らかだった。
二人の存在はそれほどまでに近付き、一体となっていた。
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