第408話
レグスが語る言葉は、もはや万人が理解出来る理屈、道理を超えている。
なんと愚かで傲慢な男だろうか。
しかしセセリナは、彼女は、そんな男を見放す事が出来ない。
レグスの揺るがぬ決意に当てられ、束の間の沈黙の後、古き精霊の少女は言う。
「わかった……。一つだけ手があるわ……」
嘘はつけなかった。
そんな事をしても、この男は諦めず単身、古き神へと戦いを挑むだろうから。
それがどれだけの無謀だとしてもだ。
だから精霊の少女は素直に自分が思いついた戦い方、一つの可能性について語り聞かせた。
イファートの炎の巨躯は近付くだけで人の身を燃やしてしまうほどの力を有している。
対抗せんと、レグスが魔剣の力を使ったところで黒剣の力の多くは炎と熱より身を守る為だけに消耗されてしまうに違いない。
それでは一撃を浴びせられたとしても、とても炎の巨神を打ち倒せるほどのものには至らない。
剣の力は全て攻撃に回さねば、レグスがイファートに万に一つと勝てる可能性はない。
だから守りに関してはセセリナの術、風の力に任せなければならなかった。
だが精霊の残り少ない霊力の中で、古き神の力に対抗出来るだけのモノとなると、特別な方法を用いる必要があった。
それはセセリナの霊体をレグスの肉体に宿らせる事によってその内に魂を共存させ、二人の存在を最大限に同調させるというもの。
いわゆる憑依術と呼ばれるもので、こうする事によってレグスは始まりの大風より生まれし精霊『スティア』の存在に近付き、一時的ではあれど強力な風の加護を受ける事が出来るようになる。そうすれば黒き魔剣はその力を攻撃に全て回す事が出来る。
生まれて間もなくしてスティアの力を肉体の内に宿らせ続けた男だからこそ可能な方法だった。
しかしそれはレグスのみならず、セセリナにも相応の危険が伴う事を意味する。
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