第402話

「どう? 少しは目が覚めたかしら?」

 よろめく巨神は体勢を立て直すと、あからさまな敵意を挑発的に笑む精霊へと向ける。

 そして精霊を燃え盛る拳で握り潰そうと、イファートは炎の巨腕を伸ばす。

 それをセセリナはひらりと舞い躱した。

 ならばと、もう一方の腕を伸ばすイファート。

 それも空振りに終わると、今度は火弾を飛ばし精霊を打ち落とそうする。


 セセリナも防戦一方というわけではない。

 機敏な動きでイファートの攻撃を避けながら、彼女は術を使い反撃する。

 炎の巨躯を風が打ち、切り裂く。

 しかしセセリナのその術の威力ではイファートに致命の一撃を与える事は出来ない。


 圧倒的な破壊力に、圧倒的な強靱性を持つ炎の巨神。

 わかっていた事だ。

 今のセセリナの力ではイファートを打ち倒す事は出来ない。

 彼女に出来るのはこうして戦い、注意を引きつける事。

 そうしてベルティーナが目覚めるまで出来るだけ時間を稼ぐ事だった。

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