第392話

 消えていく……。

 シュドゥラ達枯れ森のエルフ達、その未来が、炎に焼かれ消えていく。

 だが、それが何だというのだ。

 大いなる視点を以って語れば、永き時の流れの中で滅んでいった数多の存在に一つ、彼らが加わるにすぎない事ではないか。

 そう、たったそれだけの事。何度も何度も繰り返された滅びの光景。

 それがいま一度繰り返されるにすぎない。

 そんな事はわかっている。

 だがしかし……、だがしかし、それが全てだ。

 矮小な存在にとっては、それが全てなのだ。

「天よ!!」

 シュドゥラが天と呼ぶのは教会が崇める神々などではない。

 もっと大きな存在。

 遥かなる根源の大道にして、全てが帰する無上の理。

 それを運命とも、宿命とも呼ぶ者もいよう。

 その存在に彼は問う。

「何故これほどにも不条理を与える!! 我らが何故このような苦難を味わうはめになる!!」

 戦いに敗れ、嗚咽する同胞に代わり虚空に叫び、問い掛ける。

「そんなに我らを苦しめたいのか!! 何のわけあってそれほどまでに我らを辱め、踏みにじる!!」

 嘆かずにはいられない。呪わずにはいられない。

 断末魔の叫び。

「天よ、そうして俺達を笑っているのかぁ!!」

 天は笑いなどしない。笑おうはずもない。

 ただそこにあり、そこに広がるだけ。


 赤焼けの夜空に滅びゆく者達の絶望が哭く。

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