第366話

 ずっと己を追いつづけた怪物。

 その正体をレグスはもう察している。

 逃げる必要などなかった。

 闇の中より現れるや否や吼え猛る怪物に彼は言う。

「そう妬くな獣。古い顔見知りと少し会っていただけだ」

 そうして荒ぶる怪物に対してまったく恐れなく自ら近付いていくと、レグスは己を喰らいたがるそれを前にして、言い放つ。

「そんなに俺を喰らいたいなら味見ぐらいはさせてやる。だがその代わり、もっと力を寄越しやがれ、魂喰らいの獣」

 レグスが持つ黒き魔剣『魂喰らいの剣ソウルイーター』の力の化身。

 それが怪物の正体だった。

 怪物はただ遠慮なくレグスを呑み込み、するどい牙で噛みしだく。

 死にはしない。いいや決して死ねはしない。

 全身を刻まれ、磨り潰される激痛がレグスを襲い続ける。

 その痛みこそが魂もが削られていく証だった。

 そしてその痛みこそが、彼の意識を死の淵より肉ある現実の世界へと引き戻すのだ。

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