第355話
リッチが息づく空間は呪われ、穢されていく。
その場に立つ事は、屈強たる精神を持たぬ者には耐え難き恐怖であり、苦痛となる。
だが、常人には正対する事さえ困難な魔物を前にしてもレグスに迷いはない。
彼は真っ直ぐと不浄の王を見据え、黒き魔剣を構えた。
そんな男の様子に、邪悪な笑みと共に呪わしき叫び声を周囲に響かせるリッチ。
その声に空に集う悪霊達が共鳴すると、不浄の王は身躯より暗黒の力を放出した。
それは幾本もの黒く太い触手のようなモノに形を変えて、レグスに向かって伸びていく。
そしてうねりながら、頭上より叩きつけられるようにして振り下ろされるその力に、レグスは黒剣を振り上げた。
爆ぜるような衝撃と共に黒き触手が跳ね、攻撃を受けた側は地面にめり込んでしまうかというほどに圧される。
なんと重き一撃だろうか。
レグスの足元にはひび割れすら出来ていた。
――挨拶代わりの一撃で、この威力か!!
三フィートルの大男達の全力の一振りすらも、この一撃には及ばない。
魔剣の力を利用し己の四肢を強化していなければ、この初撃で勝負は決まってしまっていただろう。
それほどの威力。
古き精霊のセセリナが強敵と呼んだだけの事はある。
――長期戦は不利、一気に間合いを詰め本体を狩り殺す!!
次から次へと迫って来る不浄の王の暗黒の力をレグスは魔剣を振るい、打ち払う。
そして標的との距離を詰めようと彼は足を踏み出していく。
だが、うねる暗黒の力の抵抗は予想を上回る激しさで思うように進む事が出来ない。
一歩、また一歩と着実に進んではいるものの、距離を詰めれば詰めるほど不浄の王の力は増し、抵抗は激しくなる。
それだけではない。
――まずいな……、思った以上に剣の力が弱まっている。
リッチを討つ為、魔剣の力を限界まで引き出そうとするレグスだったが、剣から発される力は彼の想定していた量よりもずっと少ないものであった。
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