第334話
新しき長。
ノフラはシュドゥラの事を皮肉めいた口調でそう呼んだ。
戦争前、枯れ森の民の中には、魔物と手を組み壁に侵攻する事に対して反対する者が大勢いた。
とくに前長を始めとする年寄り連中にはそうした考えの者が多く、どれだけこの戦争の必要性を訴えたところで、彼らが考えを変える事はなかった。
枯れ森のエルフ社会において年長者は絶対的な影響力を持っている。年寄り連中の同意なしに枯れ森の民として戦争を強行する事は不可能であり、このままでは死にゆく森と共に彼らダークエルフも滅するしかない状況になってしまっていた。
そこでシュドゥラは実力行使に出る。
賛同者達と共に血の粛清によって戦争反対派の重鎮達を排除し、長の立場を簒奪。
強権を振るい恐怖政治による戦時体制を調えていく。
こうしてシュドゥラは枯れ森の民を率い、魔物の大連合軍を結成するまでに至るのだが、それゆえにこの戦争での失敗は絶対に許されない立場でもあった。
もしもこの戦いに敗れるような事があれば、彼は枯れ森のエルフ史上もっとも愚かなエルフとして壁の民達によって語られ、後世の人々の笑い草にされるやもしれない。
そしてそれこそが、シュドゥラ自身が認める事がなくとも、彼が死よりも恐れたものである。
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