第329話

 事件は、劣勢をひっくり返す為に王子派の支持者達により企てられたものだと疑われ、捜査対象として多くの王子派の貴族達が徹底的に調べられた。

 公正性を重んじるロレンシア女王としても、あからさまに捜査を妨害するような真似は出来ない。女王に出来る事は、彼らの無実を信じ祈る事ぐらいであった。

 だが、結末は女王にとって最悪なものとなる。

 物的証拠を伴って何人かの王子派の者達が事件の犯人として逮捕されるだけでなく、調べに対して己の罪を認めた犯人の内の一人が、驚くべき事を自供したのだ。

 それは、この暗殺計画の指示を出したのが女王の息子自身であるとの、彼女にとって信じ難いものであった。

 ロレンシア中に激震が走る。

 曰くの王子が卑劣にも己の対抗者であったラザーン公太子の暗殺を謀るとは、やはり悪魔の血を引く者か、と。

 物的証拠を伴って次々と判明する事実に、王子派だった者達の多くも渦中の王子を見放し、ロレンシアの人々は憎悪の念すら向けて彼を糾弾した。

 王室より追放せよ、いいやそれでは足らぬ、たとえ王族とて処刑に科すより他になしと。

 女王も証拠を突きつけられて追求されれば、たとえ己の息子とて理を以って庇い立てする事は不可能。

 合理のもと多くの貴族達に煮え湯を飲ませてきた女王が、もし、己の子かわいさに強引に事件を終幕させれば、内乱にすら発展しかねない事態であった。

 ロレンシア国中が王子の死を望んでいた。

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