第321話『記憶の迷宮』
去りゆく邪剣使いの後姿を黙って見送った後、トーリ自身もまた、なおも続く防衛戦に身を投じる。
戦況を盛り返したとはいっても、まだまだ多くの魔物達が攻め寄せてきている最中なのだ。
休む暇などありはしなかった。
その忙しさの中にあって、老魔術師がどうしても気にかけてしまうのは、城外の敵軍ではなく、内で味方として戦うあの男の事であった。
――止めるべきだったか。しつこく問いただすべきだったか。
魔法を唱え、魔物の群れを払う最中にも老魔術師の脳裏に巡るのは邪剣使いの危険性、その正体について。
――だがそんな事をしていてどうする。今優先すべきは目の前の敵を追い払う事。
わかりきった優先事項、しかし懸念がこびり付き離れようとしない。
――もし魔剣の力が暴走するような事があれば……。
いや、それは杞憂か。
あの男には件の精霊が付いている。悪い精霊には見えなかった。彼女がいれば剣の暴走も抑えきれぬのやもしれない。
それともそれこそが希望的な観測にすぎない落とし穴なのだろうか。
トーリは同じような問答をぐるぐると何度も繰り返していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます