第286話
「本当の悲劇とは絶望の淵で無気力に死んでいく事だ。戦えるはずの者が、戦えず死んでいく事だ。覚悟のある者が、それを示せず死んでいく事だ。お前はファバにその恥辱を抱いて死ねと言うのか」
レグスも安易に無謀な戦いを推奨しているわけではない。彼には彼の考え方があった。
それが安っぽいものではない事をカムは感じ取りながらも、それでもここでファバを戦わす事が正しいのだとは、彼女には思えなかった。
「私達が戦いに勝てばいい事だ」
何の保証もない展望を語る女にレグスは言う。
「根拠のない夢想を語り、人を惑わすなど、お前の言う悲劇の高尚化といったいどちらがより愚かであろうな」
「命を軽んじるな」
「俺が命を軽んじているのではなく、お前がファバの魂を軽んじているのだ」
「この戦いがそれほどのものだと言うのか? 年端も行かぬ者がその未来を、大いなる可能性を懸けるに値するほどのものだと、お前は言うのか?」
「それを決めるのは俺ではない。ファバ自身だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます