第256話

 ファバ達の入城後、鷹がレグスのもとへとやって来た時、既に彼は数十もの魔狼を斬り殺していた。

 魔狼の血は魔狼を呼び寄せる。

 斬り殺せば、斬り殺すほど、血を浴び、臭いは強くなっていく。

 それが余計に、遠くの魔狼まで呼び寄せる事になるのだ。


 馬を、剣を、巧みに操り続け、魔狼の骸の山を築く男の頭上で鷹が鳴く。

 戦闘の最中にありながらも、その意味を彼はすぐに理解した。

――無事、城に逃げ込めたか。

 ならば、もうここで彼が戦い続ける理由はない。

 魔狼は何処からともなく沸き続けており、一人の力では殲滅しようもなかった。

 とくに剣を振るう本人よりも彼の乗る馬の疲労の方が目立ち始めている。

 潮時だった。

 何度襲い掛かっても傷一つ付けれぬ強敵、その存在に魔狼達が一瞬ひるむと、この隙にレグスは馬を城へと向けて走らせる。


 虚をつかれた魔狼達が後を追おうとするが、出遅れのせいもあってかなかなか差は縮まらない。

 しかしそのうち足の速い何匹かが群れより飛び出すと、レグスの馬に並ぶ。

 そして次々とその魔狼達が飛び掛かっていく。

 だが、レグスは器用に剣を操り、横から後ろからと襲い掛ってくる魔狼達を全て斬り伏せてしまう。

 斬って、斬って、斬り続けた。

 やがて、そうこうしているうちにレグスの眼前に城門が見え始める。

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