第253話

 未開の地である灰の地とは違い、フリアの大部分には人の目が届いている。

 その為、魔物が生息出来るような場所は限られており、ヘルマの汚れた血を引く者達が、大きな脅威となるような事は通常有り得ない。

 しかし、どうした事だろう。

 いったいどこから沸いて出たのかわからぬほどの大量の魔物達が、壁の西に集結していたのだ。

 主にオークを中心としたこの西の魔物達の動きは、明らかに灰の地の魔物達の侵攻に連動している。

 このような事はこれまで、一度たりとありはしなかった。

 未曾有の危機。

 東からは灰の地の魔物達が、そして西からはフリアの地の魔物達が、この壁の地へと攻め寄せて来ている。

 退路はない。

 誰もこの地獄より逃れる事は出来ないのだ。


 絶望的な状況を把握したレグス達は予定を変更し、街外れに築かれた堅牢な城へと全員が避難する事にした。

 急がなくてはならない。

 敵は既に街へと雪崩れ込んでおり、いつ城門が閉ざされてもおかしくないのだから。

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