第222話

「信じられんか。だろうな。お前は、この決闘で自分が敗れるなど微塵も思っていなかったろう。お前の脳裏にあったのは、いかに勝つかという事だけだ」

 決闘に臨んだブノーブの思考を見透かすようにしてレグスは言う。

「神々に恥じぬ戦いを、その思いにお前の剣は囚われ、ひどく単調なものとなってしまっていた。誇り高い勝利を求めたゆえに、お前の剣は自由を失ったのだ」

「誇りが……、自由を奪っただと……」

「そうだ、誇り高き民の戦士ブノーブよ。その誇りが傲慢となりお前を殺すのだ」

 レグスの話を血が出そうなほどに歯を食いしばりながら聞くブノーブ。

 彼の胸中にあるのは、生まれて以来最上の悔しさ。

「傲慢……、我が誇りを、傲慢と腐すか貴様……」

 憤怒の相を浮かべながらブノーブは言葉を吐き出す。

「いいだろう……。だがな、覚えておけ西の者よ。その誇りがあったからこそ、私は今日まで戦い抜いてこられたのだ。その誇りなくして、私は私たりえぬ」

 レグスが傲慢と呼ぶ誇りを支えにして、男は数々の修羅場を戦い抜いてきた。今さらそれを捨て去る事など出来はしない。

「くるがよい!! 全血肉を以って貴様を討ち、正義と我が誇りを証明してみせよう!!」

 空手の大男が猛り吼えた。

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