第208話
「……なにやってんだ。とっとと止めさしちまえ!!」
ハッとし思い出したかのように声を掛ける少年。
彼の声に従うようにレグスが再び渾身の一撃を放つ。
「よし!!」
大男の肉体を捉えたレグスの剣。
血が舞い、肉が飛ぶ。
今度こそ決まった。そう少年は思った。
しかし。
「殺せ、殺せ、殺せ!!」
観衆の声は変わらず。
胸を抉り斬り裂かれた大男の立ち姿も変わらない。
それでも、裸の大地を全て大男の血で染め上げる勢いで、次々と斬り付けるレグス。
されど大男は倒れない。
――なんだよ、これ……。
不死身の大男が立っている。
「殺せ、殺せ、殺せ!!」
興奮する観衆とは対照的に、少年は我が目を疑う光景に言葉を失っていた。
血塗れの大男がゆっくりと手にした大剣を振り上げる。
――ああ、まずい。
ただただそう思った。そう思うだけだった。
それ以外には何もない。
呆然と眺めるファバの目の前で、その時が訪れる。
「殺せ、殺せ、殺……」
観衆の声が遠く聞こえなくなっていく、そうして無音の世界が訪れると同時に、大男が剣を振り下ろす。
剣は、いとも簡単に標的の首を刎ね飛ばした。
――あっ……。
何が起きたのかわからない。
主を失った胴体が大量の血液を噴き上げる様を眺める少年には、事象は理解出来ても、それが意味するものまでは思考する事が出来なかった。
弧を描きながら、何かが宙を飛んでいる。
丸い何かが……。
それがボトりとファバの目の前に落下する。
――ああ、そうだ。これは頭だ。
頭がごろりと転がり少年の方を向く。
目が合った。がらんどうの瞳がじっと少年を見つめていた。
頭は支配すべき胴を失い、黒々とした血を吐き出し続けている。
その黒い血、がらんどうの瞳に、少年はようやく何が起きたのかを認識する事が出来た。
彼は知る。
目の前に転がり落ちている物、それは……。
――レグスの頭だ。
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