第187話
「信じられない!! いったい何を考えてるのよ!! あの大馬鹿者!!」
指輪から出て、ぷりぷりと怒るセセリナ。
少年の前に姿を現してからずっとこんな調子だ。
勝手にファバの御守りを押し付けられたのも面白くないが、レグスを守るという役目がある彼女にとって、現状は好ましいものではない。
しかも、それがレグス自身の無茶の結果がもたらしたものなのだから、余計に腹が立つというもの。
「知らねぇよ、俺に当たるなよ」
「あんたもあんたよ。ただのガキんちょの癖に壁を越えたいだなんて」
「今さらまたその話かよ。第一、俺がどうしようと、てめぇには関係ねぇだろ」
「関係ない? よく言えたものね。じゃあ、どうして私がこんなところにいるわけ? 一人じゃ何にも出来ないお子様を助けてあげる為じゃなくて?」
「助けてくれだなんて、頼んだ覚えはねぇ!!」
雰囲気は最悪だ。
もとよりセセリナはファバを連れて行く事には反対していたし、少年の方もそれを知っている。
口ではどう言おうと、そんな彼女の力を当てにしなければならない己の無力さが、ファバの苛立ちをより大きなものへとしていた。
そんなギスギスとした雰囲気の中、セセリナが何かに気付く。
「誰か来る……」
そう言ってファバと顔を互いに見合せた後、慌てて指輪の中へと戻る小さな精霊の少女。
一瞬にして場の緊張感が高まる。
少年は急いで手近の武器を拾い上げると、全身の神経を天幕の外の気配へと集中させる。
往来する人々の足音。
――ガシ、ガシ、ガシ。
いくつものそれの中から、一つ、この天幕へと近付いてくるものがある。
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