第177話

 ローガ開拓団の者達に告げるべき事は告げ終えたレグス。

 彼が他にすべき事、それは隔離、監視される自身のもとから離され、冷え切った関係どころか、憎悪する者がいる中へと取り残されるファバの身の安全をどう確保するかである。

 一時的に壁の民達に預けたとて、レグスに何かあればそれまで。何の解決策にもなっていない。

 もしもの時にも、ファバを無事この地から逃し得る手段。

 彼が目を付けたのは、まだ出会って間もない遊牧民の女カムだった。

 あの場よりわざわざファバと彼女を連れ出したレグスに対して何か勘付いたのか、険しい顔でジバ族の女は言う。

「話とはなんだ? 面倒事ならお断りだぞ」

「簡単な頼み事だ」

「簡単か……、それで?」

「私が無事戻るまで、このトウマの警護を頼みたい」

 そう言ってファバの方へと目をやるレグス。

 少年の方は少々不満気ながらも黙って話を聞いている。

 いつものファバなら自分の御守役の話など、騒ぎ立て反抗してもおかしくないのだが、彼は処刑場から天幕へと戻るまでの間に、レグスからの説明を事前に受けていたのだ。

 不満は当然ある。

 だが、既に己の無力を十分と承知している少年は結局その指示に従わざるを得なかったのだ。

「何故わざわざ新参の私にそんな事を頼む。他に付き合いの長い者達がいるだろう」

「他は皆、大なり小なりロブエル・ローガの息のかかった者達だ。状況が状況なだけに新参者の方がむしろ好ましい。それに……」

「それに?」

「直感だ。お前が幼気な少年をむげに扱うような真似をする女ではないと、私にはそう見えた」

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