第152話
「……なっ、何故だ!?」
「鷹使いというのは魅力的だが、灰の地で戦っていけるとは思えんのでな。悪いが他を当たってくれ」
「私は戦えるぞ!! 女だからといって甘く見るな!! 私はこの愛馬フウバと旅を続け、鷹のライセンと共に悪を討ってきた。盗賊共だけではない村々を荒らすオーク達すらも私達の力だけで退治してきたのだ!! 私には幼き日より草原で学んだ弓術と馬術がある、戦いで足をひっぱるような真似はしない!!」
「草原で学んだ術か……。そういう話ではないのだよ、遊牧民の娘よ」
「では何が気に喰わない」
「目だ」
「目?」
「瞳の中に濁りがない。お前は正義感の強い娘なのだろう。曲がった事が嫌いで、村々を無法者や魔物から救うのもほとんど無償でやっていたのではないのか?」
「それの何がいけない」
「悪い事ではない。立派な事だ。だがグレイランドではそんな生き方は通じないだろう。お前の目には己の手を汚す覚悟がない」
「手を汚す……」
「人を殺せるか殺せないか、そんな次元の話ではない。時に悪だとわかっていても、それを為す覚悟があるかどうかだ」
「それは……」
悪を為す、それは女の価値観では許せぬ行い。殺しが問題なのではない。その殺しに正義の信念がない場合が問題なのだ。
まさしくそこを見抜かれていた。
「我々は余裕があるわけではない。覚悟のない者を連れて行く事は出来ん」
正義感、時に素晴らしく、時に混乱をもたらす諸刃の剣。シドはよくわかっていた。自分達のような集団にこの手の人間を加えてもろくな事にはならないと。
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