第148話

 嬲るような言葉を浴びせた男に対するベルティーナの怒りは明らかだった。

「し、知らなかったんだ……、すまねぇ、さっきの言葉は取り消す。ゆ、ゆるしてくれ!!」

 女魔術師の怒りに触れた男は命乞いを始める。だがそれも無駄な事。

 彼女の紫の瞳が灰色に戻ったのは、盗賊達、その全てを殺し尽くしてからの事だった。

「何も殺してしまわなくたって……」

 ミルカが哀れな無法者達に同情を見せるがベルティーナにその心は理解されなかった。

「は? あなた、あいつらが吐いた台詞を聞いてなかったの?」

「聞いてたけど……」

「ミルカ、甘いのよあなたは。あんな屑共の事気にかけて、聖人にでもなるつもり?」

「そんな事……」

「いい? 灰の地では魔物だけじゃなく、野蛮な蛮族共も、うじゃうじゃいるのよ。蛮族だけじゃない他の開拓団の連中や殖民の奴らとも争いになるかもしれない。甘い事言ってると命取りになるわよ」

「だけど……」

「だけどじゃないの。その甘さで命を落とすのがあなただけとは限らないの。もしも、あなたの甘さがロブエル様を害するような事があれば、私はあなたを絶対に許さない」

 血を分けた姉妹であろうに、ロブエル・ローガに関する事だけはミルカに対しても容赦のないものだった。

 ベルティーナ、二色の瞳を持つ彼女がここまで主に傾倒する理由はいったい何であるのか、レグス達にはわからない。

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