第135話
壁上は開けた場所ではあるのだが、遠目からではその場の異変はわからなかった。
そこは星の光りが漂っており、奴らの姿が見えにくくなっていたのだ。
ある程度の距離に近付いた時、ルル達の目の前に大量のリザードマン達が姿を現す。
二足歩行するトカゲ人間が戦い死んでいった壁の民を貪り喰い玩具にする残酷な光景がそこには広がっていた。
「腐れトカゲ共があああああ!!」
何の迷いもなく、何の恐怖もなく、内から湧き上がってきた激しい怒りの感情に身をまかせ、壁の戦士達は魔物の集団へと突撃する。
リザードマンは使用する武器に槍を好んだ。彼らは白兵戦において槍の間合いで戦いながら、相手に懐深くまで詰められた場合、それを捨て、己の鋭い爪や牙で対応するという戦い方を基本としていた。
不快な鳴き声を上げて手にした槍で攻撃してくるリザードマン達。
「ふん!!」
ルルはそれを軽くかわしながら、三フィートルの巨体から斬撃を繰り出す。
その威力たるや凄まじく、リザードマンが纏う硬い鱗の肌ごと、いとも簡単に叩き斬っていく。
ルルの斬撃に対して敵の硬い鱗肌も、剥き出しの腹を守る為に身につけた革製の防具も役には立たない。
速く、重い、一撃がリザードマン達を次々と葬っていく。
三フィートルを越える大女の前では、その半分ほどの背丈しか持たないリザードマンはまるで子供であり、恵まれた筋肉を持つ壁の民に比べ、この魔物達の膂力などたいしたものではない。
そのうえ通常ならば大きく開く剣と槍の間合いの差、それがこの戦いにおいては様子が違っていた。
槍は確かに間合いの長さに優れた強力な武器であるが、身長三フィートルの壁の民が振るう巨大な剣の前ではその優位も霞んでしまっていたのだ。
「ズズの忠告を忘れるな!! 奴らは毒を使うぞ!!」
黒沼のリザードマンは元来毒を持たぬし、また毒武器を作るほどに邪知深くはない。
この魔物達の武器に毒を与えた者がいる、恐らくはゴブリン達だ。
奴らは利己的で臆病者で残忍、そのうえ浅ましく、打算的な魔物。戦いの矢面に立つ事を嫌い、奇襲や卑劣な策を用いる事を好む。
星明かりの魔術を利用した奇襲や卑劣な毒の武器は奴らが喜んで考え付きそうな事、加えてゴブリンは黒沼のリザードマン達と同じく皇帝ネロの眷属である。この二種の魔物が協力関係にあるのは不思議な事ではない。
毒の武器は傷を負っただけでも致命傷となり兼ねない。だが、これだけの数、戦いの民である彼女らとていつまで無傷でいられるか……。
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