第130話

「とまぁ、俺がグレイランドを目指す理由はこんな感じなんだが……、で、ゲッカ、お前さんは何故、開拓団に加わったんだ? グレイランドでの目的はなんだ」

 ようやくといった感じで、ディオンの最初の質問へと話題がかえってくる。

 その質問に席を立ちながらレグスは言う。

「残念ながらそろそろ時間切れだ。その話はまた今度だ」

「おい、人には長話させておいて、あんまりじゃねぇか」

「今聞いて置かねばならん事でもないだろう。これから長い付き合いになるんだ、そうだろガドー」

「ハハ、違いねぇ。まぁいいじゃねぇかディオン。この兄ちゃん、無理矢理聞き出そうとしたところで喋る気のない話を喋るような男じゃねぇだろう」

「ちっ、俺も酒がまずくなったぜ。ここでお開きだな」

「おお、そうかい。俺はまだしばらく飲んでくぜ」

 そう言うガドーを残してレグス達は支払いを済ませ、店を出る。

 そしてその帰り道ディオンは二人にこんな事を言った。

「ゲッカ、あんたらが何を考えてこの開拓団に加わったのか、俺には想像もつかない。ただ、悪い風を運び込むような真似だけはしないでくれ」

 難病の妻の為に死地に赴かんとするディオンの言葉が、ファバには痛く感じられた。

 表情一つ変えずディオンに『安心しろ、そんな事にはならん』と答えるレグス。

 彼はいったい何を思い抱いてその言葉を吐き出したのだろうか。


 少年はまだ、何も知らぬのだ。

 レグスという人間を、彼が背負った過酷な運命を、そしてこれから先に自分自身に待ち受けているものを。

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