第117話
頭下げる二人のデリシャ人を見てシドがベルティーナに言う。
「もうよせベルティーナ」
「あら、いつから躾のなってない犬の味方をするようになったのかしらシド」
「どちらの味方をするつもりもない。こんなつまらぬ事でお前が手を汚すなど、ロブエル様が望むまいよ」
「では、あなたがケジメをつけさせればよろしいのではなくて?」
「何らかの処分は必要だろう。だが命を取るほどの事ではない」
「大恩ある主に対する侮辱の言葉を聞いて、でてくる言葉がそれ? 呆れたわシド。あんたもあいつらと同じ、恩知らずって事かしら」
政争に破れ、罪人に身を落としたロブエルを、大勢の人間があっと言う間に見放した。それまで媚び、へつらい、なんとか恩恵に与ろうと近寄ってきていた者達が、受けた恩も忘れ、主を見捨てたのだ。
そんな者達をベルティーナは決して許してはいない。
「言葉が過ぎるぞ。シド・オルブのロブエル様に対する忠心、一度足りとて揺らぐ事はありはせん。だが、ツァニスを害せば、ディオンとて黙ってはいまい。何より人手が不足気味なのは事実だ。グレイランドの地において、ロブエル様の身の安全を確保する為にも内で争ってる場合ではないのだ」
「だからって名を偽るような者達すらも信用しろって言うの?」
「彼らの全てを信用する必要はない。だが、お前には敵を見分けるだけの力がある。そうであろう?」
敵を見分ける力。具体的にそれが何であるか、レグス達にはわからない。
だがグラスやミルカかが特殊な力を持っているようにベルティーナが何らかの力を持っていても不思議な事ではないだろう。
「しっぽをだしてから気付いても手遅れだって可能性もあるわ」
「では、こうしよう。ミルカにこの者達を『見て』もらう。質問は簡潔に一つ、ロブエル様に対する害意があるか、この問いに答えられたのなら、彼らが何を隠していようと、お前とて問題はあるまい」
「はぁ、……いいわ」
溜め息を一つ尽いた後、ベルティーナはシドの提案を受け入れた。
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