第112話

「ここにいるのが現状のローガ開拓団の面子という事になる、と言いたいとこだが、何名かは王都の方に滞在している。事情は皆まで説明する必要もないと思うが、彼らについては『壁』で合流する事になるだろう、とだけは言っておこう」

 レグス達の姿を確認したシドが言う。

 事情とはロブエル・ローガの身が今だ王都で囚われの身である事に違いなかった。ロブエルは罪人として事実上の追放処分を待つ身で逃亡を防ぐ為、壁に送られるまで、自由には動けないのだ。

 それぐらいの情報はレグス達も事前に掴んでいる。もともと開拓団がグレイランドに向けて出るという情報も彼が所属するギルド『アウロボロス』を通して得た物。ベルフェンの大臣まで務めた男が政争に破れ、新王の興も兼ねた思い付きで、吊るし首ではなく灰色の地へ送られるという事まで蛇の組織は知っている。

 ただ気になるのは、グラスを含めた四人については何の情報もなかった事だ。情報をだした人間が単に知らなかったのか、あるいは意図的に伏せたのか、今となっては過ぎた事なのだが。

「それではまずは君から軽く自己紹介でもしてもらおうか」

「ああ……。ゲッカだ。剣の腕を見込まれて参加する事になった。よろしく頼む」

 シドに促がされレグスが簡素な挨拶を済ませると、ガドーが大袈裟な反応を見せる。

「おいおい、それだけかよ。もっと他にもあんだろ。酒とか女の好みだとかさぁ。長い付き合いになるんだ、それだけじゃあ話題に困るぜ」

 この場で明らかに浮いているガドーの調子。

「別にお前たちと馴れ合うつもりはない。私は私の仕事をこなすだけの事」

「かぁ、冷たいねぇ。どうして強えぇ奴ってのはこうもいけ好かない野郎が多いのかね」

 嘆くガドーにグラスがくすくす笑いながら言う。

「それって僕も入ってるのかな?」

「いえいえ!! ボス達は違いますよ!! いやあシドさんも含めてこんな俺によくしてくれてますもん、いやほんとにね」

 己を卑下するようなガドーの言い回しからは、はっきりとした力関係が見える。

「あんたの事はどうでもいいのよ。それより、さっさと済ませてくれないかしら」

 一連のやりとりに苛立った様子で、昼間の女が口を開いた。

 彼女の棘のある言葉の後、ガドーが詫び、一同の視線はファバの方へと移る。

「あ、ああ。ええと、トウマだ。まぁ、ゲッカの付き添いというかいろいろ雑用など手伝ってる。……そんなとこだ、よろしく」

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