第104話


「わかった、わかった、俺の負けだ、勘弁してくれ」

 あまりの差に苦笑いを浮かべて両手を上げ降参するガドー。

「あんたの力は本物だ。ボス達のところに案内するから、その物騒な刃物は下げてくれ」

 そう言われてレグスが短剣をひくと、少し安堵した表情をみせた後、己のハゲ頭を撫でながらガドーは言った。

「いやぁ、参ったぜ。結構な数をここでふるいにかけてきたが、あんたぶっちぎりのトップ合格間違いなしだよ」

 愛想笑いというべきか、卑屈な笑みと言うべきか、ガドーはそんな表情を作りながら言葉を続ける。

「そういや名前をまだ聞いてなかったな」

「ゲッカ。こっちの小さいのはトウマだ」

 また偽名を名乗るレグス。

「ゲッカにトウマねぇ。東黄人っぽい名前だが……」

 怪しむようなそぶりを見せるガドーだったが。

「おっといけねぇ。つまらねぇ詮索はなしだよな。そういうの苦手なんだよ、俺の領分じゃねぇ。ボス達に任せるさ」

 一人で何やら納得したように頷き、彼はレグス達に付いて来るように言う。

「じゃあ、付いて来な。ボス達に会って、許可が下りれば、見事、ローガ開拓団の一員に仲間入りだ。安心しなよ。さっきも言ったがあんたの腕なら合格間違いなしだ。ガッハッハッハ」

 愉快げに笑いながら酒場を出るガドー。レグス達はそんな男について行き、サドゥダラの郊外にある建物へとやってくる。

 そしてその建物の扉を躊躇いなくガドーは叩いた。

「ボス!! 俺だ、ガドーだ!! すげぇのが来たぜ!! こいつぁ大当たりだ!!」

 ガンガンと何度か扉が叩かれると、それは開いた。そして。

「うっさいのよ、デカブツ!!」

 ドアから女の足が伸びてきて、ガドーの腹を蹴り飛ばす。

「ぐっ……、す、すいやせん、嬢さん」

「あんたねぇ、ここは一応秘密にしてる場所なんだから、そこらに聞こえるような声だしてんじゃないわよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る