第97話
「責めるつもりはない。誤解しないでくれ」
――わかっているわ。あなたにあるのは焦り。
「焦りだと?」
――それはあなたの焦りであり、石の焦りでもある。
「どういう事だ」
――リーシェのお腹の中にいた時から石はあなたに種を植え付けていた。来るべき日、あなたの居場所を示す座標として。だけど石の植えた種はあなたが生まれてすぐに暴走した。
「そこをお前に救われた」
――暗黒の力があなたの魂を蝕もうとしていた。その悪しき力を私が抑え、あなたを救ったの。だけど取り除けたわけじゃない。暴走した力は今も私の力を押し退けようともがいているわ。
「それが俺の焦りだと」
――種の意志は石の望み。あなたの体は今だに石の影響を受けている。
「まさか……」
――そうよ。あなたが石を追い求めるのは あなたの本当の意志によるものではないわ。魔石があなたを誘っているだけ。
愕然とするような事実。
――あなたは私をこの村に残して行くと言ったけど、そんな事出来やしない。いいえ認めるわけにはいかない。もしそんな事をすれば私の霊力で抑え込んでいる悪しき力が必ず害をもたらすわ。たとえ今のあなたがそれに耐えられたとしても、……石はあなたを逃さない。魔人にしようと必ず石はあなたの前に現れるでしょう。そしてその先にあるのは破滅よ。
「呪われた宿命か……」
――あなたの内に宿った石の力の暴走は、私がいれば抑えていられるわ。このまま石の事など忘れ、あなたの肉体がその生の役目を終えるまで静かに暮らす、その方が利口だとは思わない?
「そうだな。お前の言う事は正しいのだろう」
――だったら!!
「駄目だ。セセリナ、俺は……」
炎、老いた男、恐れと憎悪の眼差し、過去がレグスに纏いつき、彼の背中を押す。
「石の呪縛が俺の宿命だと言うのなら、そこから目を逸らし生きるなど出来はしないのだ」
――そう、やはりそうなのね。わかったわ、呪われた宿命が歩みを止めさせてくれないのならばあなたがすべき事は一つだけよ。
「一つ?」
――よく聞いてレグス。石を追うんじゃない、石に対抗する手段を見つけるのよ。私の霊力によって石が今のあなたの位置を見失っている間に、魔石に対抗する術を見つけなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます