第59話
しばらくして、二人の前に青目人の老人が現れる。どうやらこの老人が彼の人物らしい。
「まったく朝っぱらからこんなところに連れ出しおって。若いお前らの仕事だろうが、これは」
愚痴を吐きながら近付いてくるボルマン老人は杖を手にしてるものの、その足取りはしっかりしており、歩行の補助を必要としているようには見えない。
「ボルマンさん、そう言わんで下さい。俺達だけじゃどうにもならんのですよ」
見張りの村人達はどうやら彼に対して頭が上がらないらしく、下手から不満気な老人を必死に宥めていた。
「で、こやつらか」
ボルマンがレグス達の方を見る。
「ええ、もとは旅商人もしてたらしいんですが、荷がいろいろと特殊で、いちおうボルマンさんに見てもらおうと……」
ロニーが足元に広げられたレグス達の持ち物を指しながら言った。
「常日頃の勉学を疎かにしておるから、いざという時にこうなる。どれ、見せてみろ」
と言いながらボルマンはまずレグスの剣を調べる。
鞘から抜き、刃に触れ、柄を眺め、そして頷き、彼は言う。
「お前さんこんなものどこで手にいれた」
レグスを見るボルマンの目には疑いの色がはっきりと見てとれる。
「古い商売仲間から譲られた物だ」
「商売仲間……、そうかい」
それだけ言って老人は短剣、機械弓、荷袋の中に入った様々な道具も順に調べていく。
「どうですかね、ボルマンさん」
見張り役の村人が不安そうに尋ねる。
「ふん、旅商人だっけかのう」
ボルマンがじろりとレグスに視線を向ける。
「もとだ」
「どっちでもええがの。……はい、そうですか、お通り下さいといくような物じゃないわな、これは」
村人達の緊張感が一気に高まる。
「何もんじゃお前さん」
警戒心を露わにするボルマンに対してレグスは言う。
「同じ台詞を繰り返すのは好まないのだがな」
「それはこっちも同じだ。つまらん嘘はよせ、若いの。名を偽り、身分を偽り、何を企んでおる」
老人の目を完全に欺く事は不可能であると、レグスは早々に悟る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます