第16話 魔王、部落につく

我が城を出発してから、数時間経過していた。

そして、馬車の中でレッドと話しをしていた。

その話は……レッドを襲ったもののことについてだった。


「レッドよ、我は正直に言わせて貰うが、我はお前を襲ったものを目族が雇った手だれだと考えておる。」

「そ、そんな」

「お前を襲うことにメリットを持つものが考えても他にいないからな……」

「……それでは」

「だが、我が考えているだけだ、違う可能性もある。お前はお前で襲われたきっかけを探ると良い……」

「はい……」


我はそれ以降、レッドとの会話はしなかった。

そして、我とレッドがその会話をしてから数時間がたち、外は出発したときよりもはるかに暗くなっていた。


「ふむ、一日で着くつもりではあったが……これは着くのは明日になるか。」


我はそう呟き、馬車の前方を見ていた。

なぜなら、その部落へ行くための途中にある、橋が壊れていたからだった。


「これは……俺が来たときはまだ壊れていなかったのに……」

「ふむ、そうか。……とりあえず、橋は直すとしよう『アンブレイク』」


我は、その壊れた橋に向けて魔法を放った。

その魔法は壊れているものを壊れる前の段階まで戻す魔法だった。

ただし、この魔法は使ってから数時間はしないと完全に戻らないため、今日にわたるということは出来ない。


「さて、この魔法で直るまでは時間がかかる……このあたりで野宿と言うことになるが構わぬか?」

「いえ、魔王様がそういうのならば……問題はありません。」

「そうか……では、クリア頼む」


我は、我達を守っている影の者の一人の名を呼んだ、すると、我が止めている馬車の隣に現れた。そして、その者に野営の準備をさせた。


「では、私はこれにて……通常業務に戻らせていただきます。」

「うむ、ご苦労だった。」


その準備は完璧であり、魔物一体も寄せ付けないようになっていた。


「これは……」

「野営の準備だな。我もこれぐらいのことは出来るが……下の者を使わねばならぬからな。我は、右側。お前は左側を使うとよい。」

「はい」


我達は橋が直るまでの間その近くで野宿をした。

その途中、何回か魔物が来たらしいが全て影の者が倒していた。

そして、次の日になり、その橋は昨日とは違い完璧に直っていた。


「ふむ……なかなか、だが元もぼろぼろか……こやつで渡れるかどうか……」


我はその直った橋を見、自分が召喚した馬車を見ていた。

直ったとは言え、その橋はぼろぼろであり、一定の重さを超えると橋底が抜けそうであった。


「ふむ……そうだな……しかたあるまいか。『グラック』」


我は考えた結果、自分が召喚した馬車を小さくした。

といっても、人が乗れる程度の大きさは残っているが……


「では、行くとするぞ」

「はい。」


我は再びその馬車に乗り、端を渡った。


□□□


あの橋を渡ってから、数時間たち、我達は目族の部落のすぐ近くまで来ていた。


「ふむ、あれが……目族の部落か」


我は、見えている、その部落を見て呟いた。


「はい、あれが俺達の部落です。……魔王様はここで一旦待っていていください。部族長に話を通してきますので……」

「あい、分かった。では、待っておくとしよう。」


そう言って、レッドは乗っている馬車から降り、自分の部落へと入って行った。


「誰か一人はついて行かせたか?」


そして、我はレッドが馬車を降りてから少ししてから影の者に話しかけていた。

我が話しかけると、一人の影の者が我のそばに姿を現していた。


「確か、シャドーだったな。どうだ?」

「はい、レッド殿に一人、ステルをつけました。」

「そうか、戻ってくるまでお前達も待機していろ」

「はい」


我はシャドーにそう言って、シャドーはその場から消えた。


「さて……後は、レッドを待つだけか。」


我はそう呟き、レッドの帰りを待つことにした。


□□□


レッドが我の馬車から降りて、数十分経過していた。


「ふむまだ、こないか?」


我がそう呟いていると部落の方から3人の人影がこちらに来るのが見えてきた。


「あれは……うむ、一人はレッドだがあとの二人は誰だ。部族長ではないな……」


その人影は我が見る限り、レッドと部族長ではない人物であった。

その人影が見えてからすぐ、その人影の人物は我の元まで来た。


「魔王様、伝えてまいりました。」

「レッドよ、戻ったか。それで、その2人は?」


戻ってきたレッドに我は、レッド以外にいる2人のことについて聞いた。


「この2人ですか。この2人は部族長から魔王様を案内するためにと付けられた者達です。」

「私はレヴィです。お見知りおきを魔王様……」

「俺はグライだ。よろしくだぜ魔王様」


その2人は我に自身の名前を告げた。


「そうか、うむ分かった。では、部落に入らせてもらうぞ。」

「「「はい」」」


そうして、我は目族の部落へと入って行った。

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