第5話 勇者、思う
私達は今、魔王城に向け歩いていた。
隣には今その魔王城に用があるという青年がいた。
少し前まではラーサの肩を借りながら歩いていたが、もうだいじょうぶだと言い、自ら歩き出していた。
私達は、その青年と会話をしながら街道を歩いていた。
「それで、どういったのか分かる?私達でも一応、探してみるからさ」
「いえ、それには及びません……このことは魔王様にも申し上げる予定ですので。」
「そうですか……」
その青年はそう言い、それ以降一言も発せず、私達に続いて歩き出した。
それから、少しして魔王城の門近くまで着いた。
私達が門前にいる兵士に話しかけると、兵士達はまずその青年に身分や何の用があるかと聞いていた。
私達はそれを見ながら、その青年が襲われたという人物達のこと、そして、その青年自身のことを考えていた。
「あの青年……見るからにどこかの部族の偉い人かそれに連なるものだと思うぞ。」
アッシュがそう言った。
私もそれは考えていた。魔王に告げたいことがあるといった時点で偉い人……もとい種族の長やそれに近しい人だということは考えていた。
ただの一般人がむやみに襲われると言ったことはこの城下町周辺で滅多に起きない。
それに、盗賊だとしてもあの青年が後れを取る筈がないと感じた。
あの青年、現在は弱弱しい感じだが、私の見立てではそれなりにできる者だからだ。
「おそらくだが、あの青年、目族だな……私が、肩を貸したときに少しだが三つ目の眼らしきものが見えた。」
「目族か……」
ラーサの言葉にアッシュは呟いていた。
「だが、魔王に言うことがあると言うことは俺達の国に関係があることか……」
「おそらくだが、そうだろうな」
「でも、魔王は確約してくれてますし……大丈夫じゃないですか?」
「それは……まぁ、そうだな。」
アッシュ達は話し合っていた。
その際、私にはわからないだろうとアッシュが私に目族のことを聞かせてくれていた。
私は元々、知っていたがアッシュの説明に所々で肯いたりほぉーっと呟いたりしていた。
それを見ていた、ミーナは気のせいだと思いたいほど目をきらきらさせていた。そんなに私はお前の何かを刺激するほどか!
……さておき、青年の話はひとまずということになった。
それから少し、襲撃者のことを考えていたが、兵士から呼ばれその思考は中断することになった。
「はい、確認が取れました。どうぞ中へ」
兵士はそう言い、私達は城の中へと入っていた。
□□□
それから少しして、私達が城の中を案内していると、メイド長が私達にむけて歩いてきていた。
「おや、どうしましたか?」
メイド長は私達に気づき話しかけてきた。
私は普通に青年のことを語った。
すると、メイド長は
「そうですか……でしたら、後は私が変わります。」
と言ってきた。
私は断ろうとしたが、メイド長はその返答が分かっていたかのように
「いえ、楽しんできてください。久しぶりなのでしょう?」
と言ってきた。
私は少し考え、メイド長の善意をうけることにした。
その際、アッシュとラーサは少し頭にはてなを浮かべていた。
青年をメイド長に渡し、私達は来た道を戻り城から出て行った。
□□□
「さて……いろいろとありましたが。案内を続けます。」
私は城から出て、そう告げた。
それを聞いた、アッシュは呟いた。
「……それにしても、やっぱり薫のやつ、遅いな……何かあったのか?」
私はそれを聞き、そろそろ……というかやっぱりさっさと言うべきだったかと思っていた。
私が、もう言うかと悩んでいると、ミーナが私の耳元で囁いてきた。
「そろそろ、正体明かすつもりかな?」
「まぁ……ね」
「まっ、そろそろ明かさないとアレだしね。
でも、今の薫を知っても大丈夫だって、仲間だもの。」
私は、ミーナの言葉に頭を打たれたかのような衝撃を受けていた。
それもそうだ……何一人で抱え込んでいたのだろうか、こいつらは仲間なのだ、それに女になったからといって見方が変わるわけでもないだろう。
ミーナも私が女になったといって、これといって見方を変える……いや、変えてるな。
まぁそれはいい……若干変わっているが、それは元々ミーナが持っている趣味嗜好だからな。
それに付き合い自体は変わっていない。
腹をくくるか!私は深くそう決めた。
そして、それをミーナに伝えた。
「ミーナ、ありがとな……」
「どういたしまして……お礼として抱きしめさせてね!」
そう言い、俺はそのまま抱きしめられた。
急だったので避けられなかったが、まぁいいかと思っていた。
それを見ていた、アッシュ達はまた頭にはてなを浮かべていたが見なかったことにした。
そして、ミーナから開放されてから私は話した。
「……では、一旦薫様と合流する流れで行きましょうか。おそらくですがいる場所も分かりますし」
「ふむ、分かった。ようやくだな」
「さてさて、どうやって遅れたことをからかってやるかな……」
ラーサ達は各々、会った時どうするかと呟いてた。
そして、私達はとある場所へと向かう……
そう、現在の私が住んでいる屋敷である、魔王の家へと……
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