番外第4話 最強の宣伝を目指して

 困った。

 どうやら俺には動画作成のセンスがないらしい。

 異世界の魅力を伝えるために、もっとも必要な技術なのに。

 ならばどうする――

 誰かの知恵を借りるしかない。


「はぁ!? 何言ってんだ!?」


 何でもできる、万能の人間。

 コイツだったら動画のひとつやふたつ、簡単に作れるだろう。


「頼むミュータス! 何かのクエストだと思って手伝ってくれ!」

「そんな手伝い初めてだぞ……!? ていうか、それは“勇者”の仕事じゃないだろ……」


 黒ずくめの剣士、ミュータス。

 このクェスティア王国では勇者として名高い、最強の剣士。

 日々、魔王軍と戦いを繰り広げている二刀流の使い手。魔法の武具の加護によって超人的なパワーを発揮する――

 そんなスーパーマンだから、動画くらい作れると思ったんだがなぁ。


「そう邪険にするなミュータス。手伝ったらどうだ?」


 俺の提案に好意的なのは、ミュータスの友人であるメルブロッシ伯爵。スポンサーでもあり、マネージメント的な事もやっていると聞く。

 人気商売でもあるから、そういう人がいないと大変なのだ。


「……ただでさえ人前に出るのは苦手なのに」

「大丈夫だ、周りにいるのは俺達だけだから。お前はこのカメラに向かって、この世界の魅力を語るだけでいいんだ」

「やめろよマジで……! 俺そういうの一番嫌なんだよ」


 その声のトーンは、本気で嫌がっている。

 普段から色んな人につきまとわれている身だからなぁ。人気者故の苦労を感じる。


「どうしてもダメ? 勇者くん」


 そんなミュータスに、JKが上目遣いでお願いすると――


「そ、それは……いや、いくらお前の頼みでも無理だ」


 顔を赤らめて目を背ける勇者。

 これも人気商売故の哀しみ。普段、同年代の女の子と話す機会がないもんだから。


「ていうか伯爵。ミュータスのキャラ変わってません? 具体的に言うとカクヨム連載時と比べて」

「後半何を言ってるのか分からないが、ほら、きっと思春期だから色々なものに影響されやすいんだろう」

「お前ら何ごちゃごちゃ話してんだよ! いいか、俺はやらないぞ! 人前で喋るのは苦手だって、ここにいる全員が分かってるだろ!」


 確かに勇者の言う通りかもしれない。人間向き不向きはある。

 ここは諦めて他をあたろうかと思ったが――


「喋らなきゃいいんじゃないノ?」


 アミューさんが妙な提案をした。


「動きだけでも宣伝になるんじゃないノ? それか、立っているだけデモ」

「ああ、そういうCMもあるな! イケメン俳優がただ動いてるだけでもサマになる! それにナレーションをつければイケるんじゃないか?」

「え……動くだけでいいのか?」


 その提案に、ミュータスも少し心が動いたようだ。


「勇者の剣技とかあるだろ。カメラの前で剣の型を見せてくれるだけでいい。そしたら上からBGMとか声を別撮りで入れるから。いいだろ、ミュータス?」

「いつもの簡単な剣の型くらいなら……できると思うが……」


 やった! それならCMができる!

 声は――そうだな、伯爵にお願いしようか。一番シブい声してるしな。

 あとは俺が台本を書いて――



『異世界取材記!』


 無人の神殿の中央に立つミュータス。

 背中を向けている彼が、顔だけこちらを振り向いた。


『全ての魔物は、俺が斬り裂く!』


 二振りの剣を抜き放ち、魔力を解き放つ。

 それぞれ赤と青に光る剣を構えた。


『異世界を守るのは俺だ! 勇者ミュータス・ランダー! 精霊の祝福と共にあれ!』


 精霊の加護が宿る剣を振りながら、踊るように動く勇者。

 剣の軌跡が尾を引いて、暗い神殿に帯のように伸びている。


『ディルアランの魔物を断つ、二つの輝き! 七つのバージョンの光り方! 状況に合わせた、究極の組み合わせを探せ!』


 そして決めポーズと共にカメラ目線で微笑むミュータス。


『取材のお供は俺に任せろ! “超合金DX異世界取材記”! ライトノベルができるまで!』


 最後にババーンと光のエフェクトが入って――


「……どうかな、JK?」

「勇者くん、キメ顔がひきつってるよ」

「そこにツッコミ入れるのか」

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