番外第2話 必要なのは共犯者

「え、何これ、撮ってんの? やめてよ」


 ファーストフード店にて。

 向かいの席に座っている女子高生――JKの顔がばっちり映っている。


「テストだよ、これをそのまま使うわけじゃないから」

「テストだろうが本番だろうが許可とってよ! 盗撮だよ盗撮!」

「悪かったよ、次からはちゃんと言うから」

「それに映るのはあたしじゃなくて、せんせーなんでしょ? せいぜいカメラ映えするように努力しなよ」


 完全に上から目線で笑っているJK。

 一緒に異世界で旅をしたパートナーであり、駆け出しのラノベ作家。

 小説の技術はともかく、好奇心だけはプロの作家も顔負けのクソ度胸の持ち主。なにしろ異世界まで取材に行こうとするのだから。

 そもそも異世界の取材は、プロ作家も躊躇する奴が多い。

 死の危険があるからだ。

 それなのに彼女は平気でやってきた。怖い物知らずというか何と言うか――


「それでせんせー、ユーチューバーになるんでしょ? 喋りとかも頑張らないと」

「やっぱり、そういう事やらなきゃダメなのか」

「当たり前じゃん。風景だけ映すつもりだったの?」

「異世界にゃ珍しい場所がたくさんあるから、それでもいいかと思ったんだが」


 俺が映らないとダメなのか。

 当たり前だが俺は作家であってラジオDJじゃない。

 カメラの前で喋る事なんてできるわけがない。

 ましてやブーンブーンハローユーチューブとか言えるはずもない。


「なぁ、やっぱりJKも出てくれないか?」

「やだよ」


 即答された。


「頼むよ。ユーチューバーっつったって、ムサいオッサンが映るより可愛い女の子が映ってた方が視聴率いいだろ?」

「可愛い……?」

「おう、お前可愛いじゃん」


 口元を押さえて頬を赤らめるJK。


「……そーゆー事をさらっと言うからせんせーは……!」


 見たままを言っただけだ。お世辞ではない。

 JKが出演してくれれば、トークも弾んで面白い動画になると思ったのだが。


「な、頼むよJK。礼はするからさ」

「じゃあニンテンドースイッチ買って」

「え……あれどこにも売ってな……」

「買ってくんなきゃ出ない」

「くっ……!」


 足下見やがってこの女……!

 しかし動画の花をここで枯らすわけにはいかない。

 俺は渋々首を縦に振るのだった。


「ていうかさ、受けといてなんだけど、あたしもカメラの前で喋るなんてできないよ。バリバリの素人だし。JK使っとけば視聴率稼げるなんて、甘いんじゃない?」

「宣伝のためだから、多少は下手でもいいんじゃねーか?」

「いやぁ、ひとりくらい上手な人がいた方がいいって」

「こういうの上手な人かぁ……」


 何事にも物怖じせず、堂々と喋れる人間。

 かつカメラ映えする見た目。


「あ、いるわ」

「いたね」


 俺とJK、二人同時に思いついたのだった。

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