第25話 悲喜こもごも

 どんなシチュエーションを作ろうが、それは個人の自由。

 このPOKの遊び方がようやく分かってきた。

 これはVRMMOではなく、好きな状況を作れるサンドボックス的なゲームだ。

 異世界ファンタジーが気に入らなければ、違う舞台を作ればいい。

 与えられた環境に甘んじる事なく、自分の作りたいものを作る――それがクリエイターとして正しい姿なのかもしれない。

 いや、もちろん異世界ファンタジーとして、このゲームそのものを楽しむという方法もアリだろう。だが、ある程度遊んでいると、それだけでは足りないと思うのだろう。


「くっ……俺は……どうすれば……!」


 学院島の甲板でいまだに苦しんでいる作家。

 さっきから一時間ほどああやっているが、さすがに挫折長過ぎだろ。


「フハハハハ! なんだその体たらくは! そんな事では妹は預けられん!」

「くっ……俺は……守るんだ……!」


 なんだか別の男NPCまで出てきたぞ。

 他の男にヒロイン獲られて、かつ活躍の場まで奪われる主人公。

 今こんな展開やったら、絶対に受け入れられないんだろうな。

 だからこそ、このゲームで存分に楽しんでいるのだろう。

 そんな連中に、俺ができる事は――ない。

 あれはあれで完結しているのだ。手を貸したり、褒めたり貶したりする資格はない。

 このまま見守っていよう――そう思っていたのだが。


「うわあああああっ!」


 突如、上空から何かが降ってきた。

 それは甲板に命中すると派手な爆発を生じさせる。

爆弾か? だが、あの竜みたいな“ヴォイド”がそんなもの使うか?

 答えは上空にあった。

 そこにいるのはバケモノではない。

 人間だった。


「はぁ~……ったく、いつまでもウジウジと……見ててイラつくんだよね~」


 小さな竜のような生き物に乗っているのは、見知ったツラだった。

 大きな身体のラノベ作家――ヌルハチではないか。


「おいヌルハチ! お前、何やってんだ!」

「よぉ! お前、やっぱり帝国に来てたんだな!」


 爆撃の後なのに、爽やかな表情で手を挙げるヌルハチ。


「お前も見てて分かったろ? この前時代的な学園モノのクランをさぁ! こんな連中がこのゲームの中で勢力を伸ばしてるって、ラノベに対する冒涜じゃない~?」

「はぁ!?」

「もうさ、こういうラノベは今流行らないんだよ。なのに、いつまでもしがみついて――子供じゃないんだからさぁ」

「それとお前が爆撃するのと、何の関係があるんだ?」

「腹が立つんだよ」


 ヌルハチの答えはシンプルだった。


「こっちは必死こいて今売れるために努力してんのにさぁ~、こいつらはいつまでも昔の栄光にしがみついて……成長しないっていうか……時間が止まってるっていうか……とにかく、見ててムカつくんだよね~」

「だから攻撃するっていうのか」

「それもゲーム的な自由さ。嫌いなクランに攻め込むのって、別に普通だろ?」


 確かにゲームとしてならアリだ。

 だが、これはただのクラン同士の戦いというよりは――


「来やがったな、ヌルハチ!」


 甲板から別の声。

 アバラヤマだった。

 彼もゴテゴテしたパワードスーツのような鎧を身につけ、その背後には同じようなスーツを着た数人の女の子が控えている。


「性懲りもなく攻めてきやがって! このラノベの破壊者が!」

「破壊者はどっちだよ~……腐敗してんのは、そっちだろ~?」

「うるさい! なろう作家なんて、全員死ねっ!」


 アバラヤマの鎧の背面にあるブースターが火を噴くと、空中に向かってまっすぐ飛んでいく。ヌルハチに向かって飛ぶアバラヤマは、そのまま手を伸ばすとマシンガンのような銃を乱射する。

 対してヌルハチは手をかざすだけでマシンガンを防ぎ、余裕の表情。

 さらにアバラヤマはグレネードランチャーのようなものを取り出すと、ヌルハチに向かって躊躇わずに発射した。

 巨大な爆発に目を背ける。

 高レベルプレイヤー同士の戦いは、こういう感じなのか。


「アミューさんが戦えない理由って、こういう事か」


 プレイヤー同士の問題に干渉するわけにはいかないもんな。


「ねぇせんせー、止めなくていいの?」

「いいよ、やらせとけ」

「でも、ヌルハチさん……あれ、いいの? クランに攻め込んで」

「いいっていいって」


 俺は気楽に戦いを眺めている。


「あいつら、あれで楽しんでるんだ」

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