第16話 サービスサービス

 アミューさんとJKが心配になり、宿まで走る。

 遠くから見えた、あの白いマンションだ。

 景観を大事にしているせいか、メインストリートから裏路地に入らないとたどり着けないようになっている。おかげで少し探してしまったじゃないか。


「おや、先生。そんなに急いでどうされしましたか」


 見た目は完全にマンションのエントランス。

 そこでちょうど騎士アルチュールと出くわした。

 きっと今まで二人の世話をしてくれていたのだろう。


「アルチュールさん、アミューさんとJKはどうした?」

「ええ、お部屋に案内しました。先生のお部屋もご用意しましょう」

「いや、それは後でいい。それよりこの国、大丈夫なのか!?」

「……と、申しますと?」


 俺はつい先ほど酒場であったエッチなハプニングを話した。

 この国にはそういうギミックが用意されているのではないかと――


「はい、それは国王陛下の意向です。常に楽しいハプニングが起きるようにと」

「楽しいハプニングだぁ……?」

「小説を書くために必要な事だと伺っております」


 つまり取材か。

 良質なシチュエーションを書くために、あえてそういう状況を作る。

 しかも「ハプニング」と言った。

 つまり意図せず、かつオイシイ状況が起きるようになっているのか。


「フッ――どうだ、俺が作り上げた“自動取材装置”は」


 振り返ると、マンションの中からヌルハチが入ってきたではないか。


「ヌルハチ。お前もここに住んでたのか」

「リアルの自宅に近い方が集中して書けるからな~。ウチはマンションだから」

「言いたい事は山ほどあるけどよ、なんだよ“自動取材装置”って?」

「さっきアルチュールが言ってただろう~? ハプニングを起こすシステムだよ。俺のスキルで作ったんだ」

「スキルってそういう事もできるのか!?」

「“自動化”や“瞬間移動”や“アイテム譲渡”なんかのスキルをこねくり回してな。おかげでスキルポイントのほとんどをこれに割り振っちまった」

「お色気ハプニングのためだけにそこまで……」

「お色気だけじゃないぞ。町で都合良く頭の上に植木鉢が落ちてきたり、スカートを履いてる女の真下から風が吹き上がったりな」


 すげぇな、自動化スキルでそこまで。

 サンドボックス型のゲームでも難しいんじゃないか。

 げに恐ろしきはヌルハチの才能と努力、そしてこのゲームの自由度。


「ヌルハチ、一番訊きたかった事があるんだ。そのエロハプニング、女性プレイヤーにも適用されるのか?」

「もちろんさ! だけど大丈夫~!」

「大丈夫じゃねぇよ! アミューさんとJKはどこだ!?」


 俺はヌルハチの胸ぐらを掴む。


「ふ、二人なら、大浴場に行ってるはず……!」

「風呂ォ!?」


 いかん、風呂+エロハプニングといえばどういう事になるか、火を見るより明らか!

 すぐに助け出さないと!


「おい、大浴場ってどこだ!?」

「そこの角を右に曲がったら、案内板があるよ~。だから大丈夫だってば~」

「うるせぇこの変態野郎!」


 ダッシュでマンション内に入り、角を右に曲がる。

 大浴場と書かれた看板を見つけ、すぐに入――

 いや待て。

 ここで入ったら、俺が変態じゃないか。

 様子を見るために、少しだけ耳をそばだててみると――


「わぁぁぁぁっ!? なにコレ!?」

「ウワァー! すごいネ!」


 二人の悲鳴。

 俺はすぐに大浴場の扉を開けて、中に飛び込む。


「JK! アミューさん! 無事か!?」


 脱衣場を抜けて、浴室に入る。

 そこは露天風呂だった。

 岩と草で覆われた、ジャングルのような風呂。

 その湯船に、二人はいた。

 一糸纏わぬ姿で――


「わ、わわっ、ちょっ、すまん!」


 そっちを見てはいけない!

 二人の危険な部分が――


 見えない?


「せ、せんせー!? なんで!?」

「あー、センセーまた入ってきたノ?」

「お前ら……なんだそれ?」


 彼女達の胸と股間には、強烈な謎の光が。

 まるでレーザービームのように横切るライトが、俺の視界を遮っている。

 試しに横にズレてみると、それに合わせて謎の光も移動する。


「すごいネ! 最新のテクノロジーだヨ!」

「いやアミューさん、感心してる場合じゃないから! ていうか出てけよせんせー!」


 身体を隠して湯船に頭まで浸かるJK。

 何も見えなくなると、やはり謎の光も消えるシステムのようだ。

 そして見えないから安心しているのか、アミューさんは隠そうともしない。


「フハハハハハ! どうだい~、我が“青少年健全育成システム”は!?」


 困惑している俺のもとにヌルハチがやってきた。


「基本的にラノベは少年が読むものだからな~! 過剰なエロスは禁止なのだ!」

「……それって大丈夫なのか、色々な意味で」

「問題ないよ~! 誰も見てない夜中はシステムが停止するようになってるし~! それに見えそうで見えないのも、またオツなものでしょ~?」

「まぁ、それには全面同意するが」

「だから、とっとと出てけーーーーっ!!」


 JKにお湯をぶっかけられるまで、俺とヌルハチは頷き合っていたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます