第93話 秘湯混浴ツアー その1
旅行の準備には、数日を要した。
少女達全員の『通行手形』を無事、取得。
源ノ助さんはこの前、せっかく隣国に嫁いだ娘に会ったのに慌ただしく帰って来ていたので、今度こそゆっくりとしてきて欲しいと勧めたところ、笑顔で同意してくれた。
あと、三郎さんとお蜜さんは、今回もこっそり? 護衛として付いてきてくれることとなった。心強い限りだ。
ポチに関しては、一日に一回は『前田屋』関連の誰か、または海女のミヨとその家族が様子を見に来てくれる手はずだ。
そして俺達は大勢の仲間達に祝福され、見送られながら旅立ったのだった。
今回の目的は、「温泉巡り」、「神社参拝」、「富士山見物」。
特に温泉はみんな入ったことが無いと言うことで、楽しみにしているようだった。
さわやかな秋晴れの下、楽しげに会話しながら歩く俺と五人の少女達。
今回の旅行、途中までは優と二人で東海道を江戸に向かった時と行程が重複する。
優と凜さんの両親には事前に挨拶を済ましていたので、今回は立ち寄らず、日が暮れる前に宿場町へたどり着くことを優先した。
難所の『七坂八浜』は、今回も全員にワラジの代わりにウォーキングシューズに履き替えてもらっており、岩場も誰もケガせずクリア。サルの群れが住む『大峠』も、特に問題なく通過した。
それにしても、心配事があるのとないので、これほど旅の気分が異なるものなのか。
以前優と二人で歩いたときは、行方不明になったアキのことで頭がいっぱいだった。
しかし今日は何の心配もなく、澄み切った空気や暖かい日差し、自然豊かな美しい景色を存分に楽しむことができた。
そしてこの行程で、常に俺の側で寄り添うようにして歩くのは、優……ではなく、ナツだ。
なんか彼女たち、くじ引きで『本日の嫁』を決めているという。
五日ごとに新しいくじを用意し、例えばナツが当たりを引いたならばその一日は彼女が主に俺と行動を共にする。
翌日はナツを除いた四人でくじを引いて、またその日の『嫁』を決める。
最後の一人が決まるまで毎日くじを引いて、全員に順番が回ればまた新しいくじを作成する、というシステムらしい。
ローテーションにすれば良さそうなものだが、この方がドキドキできるらしい。
本音を言えば俺が毎日『指名』すればいいのだろうが、たぶんそれができない(または、毎日優だけになる)ことを見透かされているようだ。
で、今日はナツがメインの『嫁』ということなのだが……。
寄り添って歩く場合でも、少女達によって個性が出る。
優は自然に、凜さんは大胆に、ユキははしゃぐように、ハルは甘えるように。
けど、ナツはなんというか、『ぎこちない』。
俺の呼び方も、『タクヤ』と呼び捨てだったり、『タクヤ殿』だったり。
『
その時の気分によって勝手に変わってしまうらしい。
それでも、時折赤くなりながら手をつないだり、肩を寄せ合ったりで、なんかかわいい。
思ったより行程はスムーズで、夕方には『
東海道の中ではそれほど大きな宿場町ではないが、それでも阿東藩の城下街とは比べものにならない人通りの多さ、賑やかさに、初めて訪れた少女達は目を丸くしていた。
この日は旅の疲れもあり、
俺の隣はこの日の嫁のナツだったが、昼間緊張していたのか、一番最初に寝入っていた。
隣の部屋とは襖で仕切られているだけで、騒ぐわけにも行かなかったので寝るしか無かったのだが……特に何も色っぽいことも無かったのがちょっと不満……かな?
しかし翌朝、目的地の一つ「熱谷温泉」に来ると、状況は一変する。
「温泉」というぐらいだから、それなりに設備が整っているのかと思っていたが……幅二十メートルほどの川に石を積み上げて
即席の『湯船』はそれなりに広く、二十五メートルのプールぐらいはあると思われる。
既に十五人ほど入っていて、女性も数人いたが、ほとんど年配の方だ。
着替え用の小屋のような物すらなく、衣服や荷物が川原にまとめて置いているだけだ。
川底から温泉が湧き出ているようで、そのままだと熱いので、堰の隙間を調節して水を流し込み、温度を適温に保っているようだ。
川の両側は山が迫っており、実際、ここにたどり着くのは結構苦労した。
良く晴れており、そして周りを囲む物はなにもない、まったくの天然温泉。
もちろん、混浴だ。
さすがに少女たちも最初は戸惑ったようだが、こんなシチュエーションで風呂に入れる機会など、今まで一度も無かったようで、その魅力に負けたのか、まず凜さんが、次いでユキとハル、そして優、ナツと衣服を脱いでいく。
女性の旅人自体少ないのに、これほど若くかわいい少女が五人も、ということで、入浴している男達が色めき立っているのが分かった。
男達はほぼ全員、チラ見していたが、後から入ってきた三郎さんの鍛えられた肉体、そして体中の傷跡に息を飲んでいた。
お蜜さんも入ってきて裸になり、今度はその美しい裸体が注目を浴びていた。
俺達は温泉の隅で固まっており、三郎さんがガードするように間に入ってくれ、他の男達が変な気を起こさないように目を光らせている。
上空からは
川のせせらぎの音も心地良い。
良く晴れたこの日、大自然の中、次第に彼女たちも開放的になってきたのか、徐々に隠すことなく大胆に入浴を楽しむようになっていた。
立ち上がり、湯を掛け合ってはしゃぐユキ、ハルの双子。
ナツは少しのぼせたのか、岩に腰をかけて休んでいる。
凜さんと優の姉妹は、並んで上流の景色に見入っていた。
なんか、俺は放っておかれているが……この景色、シチュエーションでは仕方ないか。
もうみんな、裸をみられていることをあまり意識していないみたいだし。
ユキ、ハルの双子は、この一年でずいぶん成長し、少女から大人の体になりつつある。
ナツは引き締まった細身の体に、意外と大きくて形のいい胸で、綺麗だ。
優は、俺にとって最も理想的というか、本当に均整の取れた美しい肢体で、張りのある肌に弾ける水滴が、より健康的に彼女を引き立てていた。
凜さんの裸は大人のそれであり、年相応の色香を醸しだし、誘惑されそうな魅力がある。
胸も彼女達の中で一番大きく、髪から滴る雫が、若さと妖しさの両方を際立たせた。
そして太陽の光と、それを反射する水面の煌めき、その間に立つ五人の少女たちは、まさしく湯浴みする天女そのもの。
幻想的にすら見えるその光景に、いやらしさなどまるで感じず、俺はただその美しい自然のままの姿を飽きることなく眺めていた。
他にも、この旅の先には「夜中にお酒を飲みながら」入れる温泉や、「貸し切り混浴露天風呂」なども存在するという。
凜さんは「そこならば、遠慮せずみんなでいろいろ楽しめますわね」と言っていたが……なんか心配なような、期待してしまうような……。
ふっと、こちらを向いた優と目があった。
彼女はゆっくりと、裸を隠すこともなく、けれども少し恥ずかしそうにこちらに歩いてきて、そして俺の隣に並んで座った。
肩が触れ合い、ぬくもりが感じられる。今日の『嫁』は、優だった。
「……拓也さん、みんなのこと、ここから見てたんですね」
「ああ……でも、変にいやらしい意識を持ったりしてないよ。みんな、本当に綺麗で、それに楽しそうだ」
「ええ……私を含めて、貴方が助けてくれた女の子達ですよ。そうでなかったなら、みんなたぶん今頃……ううん、考えるのはよしましょうか」
「ああ。今はこの幸せな時間を楽しみたいよ」
「はい……本当に、みんないい顔してる……」
そう言って、彼女は俺の肩に頭を軽く乗せてきた。
今回の旅行、温泉をメインに選んだのは、少女達だった。
なんか、凜さんによる、『未だにあまり自分達に手を出そうとしない俺に、裸を見せてその気にさせる』魂胆があるらしかったが……今、彼女たちは予想以上に癒され、充実しているようだ。
隣に優、そして眼前に裸の四人の『天女』たち。
美しい風景もあり、ここは本当に『天界』なのではないか、と考えてしまった。
――旅は、まだ続く――。
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